大谷翔平(31)の初球打ちは「得策ではない」のか? 「データ重視の現代野球で“ノーボール・ノーストライク”は打者に有利」とレジェンド打者も指摘

スポーツ 野球

  • ブックマーク

初球打ちは「是」の結論

 さらに広澤氏は「逆に1ストライクを取られると、次の球を打てる確率は確実に下がることも明らかになっています」と言う。

 となると、初球打ちは問題がないということになる。いや、より正確に言えば、初球打ちがOKという以上に「0ストライクの場合は積極的なバッティングが功を奏するケースが多い」ということになるのだろう。

 今まで「もったいない!」とテレビに向かって叫んでいた野球ファンにとっては意外な話かもしれない。

 だがインターネットで検索すると、カウント別の打率に関して様々な調査が行われていることが分かる。

 そしてデータ解析の専門家やスコアラーといった野球を熟知する人々が「ストライクが先行すると打者が打つ確率は確実に下がる」、「初球打ちは決して間違ったバッティングではない」と指摘している。

「特に1巡目の初球となると、相手バッテリーは打者の体調など最新の状態を把握できないまま勝負しなければなりません。そのため初球に打者が狙っていた球が来ることは珍しいことではなく、迷わずにバットを振ると好打になる可能性は高いのです。確かに昭和のプロ野球には全打者のクセを熟知しているという名捕手もいました。バッテリーにとっては手探り状態である1巡目の初球でも、打者の立ち位置などから『インコースを狙っているな』と見抜いてしまうのです」(同・広澤氏)

データを逆利用

 打者のクセを的確に見抜くという飛びきりの“名人芸”を持つ捕手が相手なら、初球打ちを控えることは一考に値するかもしれない。

 だが、そんな名捕手は過去の存在となり、今のプロ野球はデータ全盛の時代を迎えている。そしてメジャーリーグは日本よりデータをフル活用している。

「特にメジャーリーグは日本のプロ野球と比べると、バッテリーは同じ打者と対戦する機会が少ないわけです。いつも初対戦に近い状態であり、クセを見抜くどころの騒ぎではありません。メジャーのバッテリーは日本よりもデータに頼らざるを得なくなりますから、打者はデータを逆に利用して配球を読むチャンスも増えます。大谷選手が初球を積極的にバッティングするのには、しっかりとした理論的裏付けがあるのです」(同・広澤氏)

 しかし野球ファンだけでなく、プロ野球OBからも「初球打ちは得策ではない」という指摘が出ることは珍しくない。

 第2回【ド軍・ロバーツ監督は苦言も…大谷翔平(31)の「初球打ちは間違っていない」と名将「野村克也監督」の“教え子” 投手の分業制が確立した今、あえて「球数を稼ぐ必要はない」】では、「初球打ちはもったいない」という“間違った常識”が生まれた背景をお伝えする──。

註:大谷翔平にロバーツ監督が苦言「落ち着かないといけない」好機で3打席連続初球打ちの凡退「投球を見るように伝える」(デイリースポーツ電子版:2024年4月17日)

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。