「松本人志のコスプレすらできない」大悟の決断 「酒のツマミ」を終了させたフジの“次の一手”

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絶対的なタブー

 中でも、中居正広騒動を経たフジテレビにとって、松本は絶対的なタブーに近い存在である。フジテレビ第三者委員会の調査では、端緒となった中居と女性社員とのトラブルだけではなく、フジテレビ社員とタレントがかかわる類似のハラスメント事案が複数報告されている。報告書ではタレントの名前は伏せられているが、仮にそこに松本がかかわった事案があるのだとすれば、フジテレビが彼をタブー視して、彼のコスプレをすることすら認められないと考えるのも納得できる。

「酒のツマミになる話」はもともと「人志松本の酒のツマミになる話」というタイトルで放送されていた。当初は松本がMCを務めていたのだが、彼が活動休止したことで、代役として大悟が出演することになった。

 大悟としては、先輩である松本の留守を預かるつもりでこの役目を引き受けたのだろう。しかし、情勢が変化したことで、松本がフジテレビの番組に戻ってくることはほぼ絶望的になっていた。今回の放送差し替え事件によってそれが確定的なものとなった。こうなってしまった以上、大悟がこの番組に固執する意味はない。

 10月31日放送回の冒頭では、大悟が「(相方の)ノブとも話し合った結果、酒のツマミになる話、やめまーす」と番組終了を報告していた。

 すでに収録した回が放送できなくなったことで大悟が怒っているのではないかとも言われるが、個人的にはそうは思わない。どちらかと言うと、松本のコスプレすらできない状況では、この番組を続ける意味もないと冷静に判断したのだろう。そして、すでに収録した回をお蔵入りにするほど切羽詰まった状況では、のびのびと番組を続けることができないと考えたのではないか。

 吉本興業が立ち上げた新たな配信プラットフォーム「ダウンタウンプラス」にて、松本は11月1日に復帰を果たした。松本と中居氏の騒動を経て、テレビと芸能をめぐる状況は急速に変化している。その中で地上波テレビはどのような動きを見せていくのか。危機を乗り越えたフジテレビの次の一手が気になるところだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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