そもそも自衛隊の「89式5・56mm小銃」でクマを駆除するのは至難のワザ…専門家は「アメリカ軍の特殊部隊が3人1組で立ち向かってもクマには勝てない」と断言
第1回【秋田県知事が支援要請も「自衛隊にクマは撃てない」は本当か? 1960年代には「害獣の棲み処」に陸海空3自衛隊が“猛攻”をかけた実績も】からの続き──。秋田県の鈴木健太知事は10月28日、防衛省で小泉進次郎防衛相と面会した。秋田県は相次ぐクマの出没と被害に悩まされている。(全3回の第2回)
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【写真を見る】山道ではぜったいに遭遇したくない…人間と目が合った瞬間のツキノワグマの凍りつくような眼差し
鈴木知事は「クマ問題が長期化し、現場は疲弊している。県内のマンパワーや資源では対応できない」と訴え、自衛隊の出動を要請した。担当記者が言う。
「ニュースを見た人の中には『自衛隊がクマを駆除する』と誤解した人もいると思います。しかし鈴木知事も小泉防衛相も“武力行使”までは考えていないようです。あくまでも実際の駆除は地元の猟友会が行い、自衛隊は“後方支援”に回ると見られています。具体的にはワナを設置しての巡回や、付近住民の安全確保、クマ目撃情報の対応と集約という任務になるでしょう」
これに反対する声も決して少なくない。例えば元航空幕僚長の田母神俊雄氏はXに《銃を使っての駆除は行わないということだ。それならなぜ自衛隊が派遣されるのか》、《自衛隊の行動を縛るべきでない》と投稿している。
だが軍事ジャーナリストは「あまりクマの能力を過小評価しないほうがいいと思います」と警鐘を鳴らす。
「『ヒグマは巨大で凶暴だが、ツキノワグマは小型で臆病』というイメージもあるようですが、これは全く事実に反しています。ツキノワグマでも体長が180センチに達し、体重も100キロを超える個体はいます。さらにツキノワグマは時速50キロという非常に早いスピードでの移動が可能です」
特殊部隊の隊員でもクマに負ける
時速50キロがどれほど早いか、100メートル走の世界記録保持者であるウサイン・ボルト氏の時速は37・6キロだ。
「ボルト氏の1・5倍のスピードですから、どれほどツキノワグマが早く走るか、数字が歴然と示しています。さらにツキノワグマの“腕力”や噛む力は突出しています。『前足で鉄筋をへし折った』、『鉄板をかみ砕いた』という目撃情報があるほどです。これほどの運動能力を持っているのですから、興奮して凶暴化すると人間の手には負えません。アメリカ軍の特殊部隊、陸軍のデルタフォースや海軍のネイビーシールズの隊員が3人1組でツキノワグマに立ち向かっても、重傷を負ったり死亡したりする危険性は高いと思います」(同・軍事ジャーナリスト)
なぜ特殊部隊の隊員であってもツキノワグマに勝てないのか、クマの傑出した身体能力は見た通りだが、もう一つの大きな理由は装備だ。陸上自衛隊の主力小銃は89式5・56mm小銃。アメリカの戦争映画でおなじみの自動小銃M16の口径も5・56mmだ。
ここで重要なのが国際法のハーグ陸戦条約だ。非常に単純化すると戦争の“ルール”を定めている条約であり、重要な考えの一つに「非人道的な兵器の使用は禁止する」というものがある。
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