親密な暗号資産実業家に「恩赦」も…「トランプファミリー・ファースト」の公私混同政治に米国民が「ノー」を突き付ける日

国際

  • ブックマーク

低所得者向け支援は半額に

 米国では来年の連邦議会中間選挙(11月3日)まで1年を切る中、トランプ大統領の支持が伸び悩んでいる。

 米NBCテレビが11月2日に発表した世論調査の結果では、トランプ氏の支持率は43%と、前回3月の調査から4ポイント低下した。個別の課題では「中流階級への配慮」や「インフレ」などへの対応で「トランプ政権は期待を下回っている」との回答が6割を超えており、得意とされていた経済問題を中心に有権者の不満が高まっている。

 米連邦政府機関の一部閉鎖が続いていることも頭の痛い問題だ。10月1日に始まった政府閉鎖は、過去最長だった第1次トランプ政権時代の35日間を既に上回ったが、事態打開の目途は立っていない。

 ワシントン政治の混乱により低所得層の生活は苦しくなる一方だ。米農務省は11月1日から低所得者向けの「SNAP(補助的栄養支援プログラム)」を停止すると発表した。「フードスタンプ」ことSNAPは、貧困世帯が毎月決まった金額を受け取り、認可された小売店で専用の電子給付カードを使って食料を購入する仕組みだ。米社会に不可欠なセーフネットであり、昨年の受給者は約4200万人で人口の1割を超える規模だった。

 一部の連邦地方裁判所がSNAPの継続を求める判断を下し、トランプ政権は11月の給付額を通常の半額にすると発表した。事態は流動的だが、今後もし給付が止まれば飢えに苦しむ人が増え、犯罪の増加につながるとの懸念が生まれている。

「クルマも牛肉」も高すぎる

 米国のインフレは統計の数字以上に深刻だ。9月の新車の平均価格は初めて5万ドル(約760万円)を突破し、米国民の足である自動車は高嶺の花になってしまった。

 多くの米国民が常食する牛肉の価格も高騰しており、トランプ政権は価格を引き下げる目的でアルゼンチン産牛肉の関税割当枠を4倍に拡大することを検討している。だが、この方針について、トランプ氏の支持基盤である畜産農家は猛反発している。

 雇用市場にも暗雲が立ちこめている。米コンサルティング大手PwCによれば、今年の年末商戦期間中の個人支出は前年同期比で5%減少する見通しだ。関税の引き上げなどが災いして年末商戦が不振となり、同商戦向けの臨時雇用も低調になるとの観測が出ている。

 人工知能(AI)に注目が集まる米株式市場は相変わらず好調だが、市場では「巨額のAI投資は過剰ではないか」との不安が広がりつつある。株価の急落が、消費を牽引する富裕層の財布の紐を固くさせる可能性は排除できなくなっている。

次ページ:住宅市場はすでにリセッション入りか

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。