「分譲型シニアマンション」vs.「サ高住」どっちがベター? …の前に把握しておきたい意外な“落とし穴” 検索サイトでは分からない「老後の住まい」の“リアル”とは

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それぞれに潜む“落とし穴”

【分譲型シニアマンションの落とし穴】
・短い居住期間
 健康寿命(男性72.57歳、女性75.45歳)から計算すると、65歳入居で7~10年しか住めない。数千万円の投資が「短期間の贅沢」に終わる可能性がある。

・売主のビジネスモデル
 売ったら終わりで、住民が介護施設に移ろうが、サービスを続けようが、売主には関係ないビジネスモデル。子供世代への相続も別居前提のため期待薄で、中古市場は東京以外では流動性に乏しい。

・サービス継続の不安
 人材不足の昨今、コンシェルジュや見守りサービスが現状価格で続く保証はない。

【サ高住の落とし穴】
・倒産・廃業リスク
 2024年介護事業者全体で過去最多の172件だった(東京商工リサーチ)。統廃合も加速しており、追い出された高齢の入居者が行き場を失うリスクがある。

・サービス品質の格差
 状況把握・生活相談は義務だが、低価格物件のサービスは貧弱。介護連携をうたうが、訪問介護の質は事業者次第なところがある。

・永続的な家賃負担
 所有権がないので資産価値はゼロ。月15~20万円の負担が生涯続く。長生きによって入居者の経済的余裕が失われると、その負担が家族に及ぶリスクもある。

・認知症対応の不足
 分譲型シニアマンションと同様、認知症が進むと外部施設への転居が必要になる。また、スムーズに移行できる保証もない。

「分譲型シニアマンション」と「サ高住」の情報非対称が、これらの問題を覆い隠してしまっていることに注意が必要だ。

「事業者ファースト」の罠を避け、老後は“自分で設計”する

 分譲型シニアマンションは豪華な生活をうたうが、実際に住める期間は健康寿命の7~10年が限界である。それでも価格は数千万円で、売主は販売後の生活にコミットしない。

 一方のサ高住は入居の敷居こそ低いが、事業者の経営悪化による突然の退去リスクを抱える。

 どちらも「事業者が先」で「利用者は後」である。この構造が変わらない以上、「買えば安心」「入居すれば問題解決」という考え方は成立しない。

 では、安心できる老後はどこにあるのか。

 答えは“商品”の向こう側にある。「施設」ではなく「生き方の設計」に軸を移すことだ。

 大事なのは、まず家族で老後の設計図を描く作業である。求める生活水準はどこか。介護はどこまで外注できるか。手持ち資産と年金でどの程度の継続コストに耐えられるのか。こうした“自分たちの基準”が先にあって、はじめて住まいの選択肢が評価できるようになるのではないか。

 老後は、物件探しではなく「条件づくり」から始めると失敗が少ない。華やかなパンフレットの“理想像”ではなく、家族の暮らしに即した“実寸大の設計図”こそが最強のリスクヘッジになる。安心は「買う」ものではなく「組み立てる」ものと心得ることが老後の住まい選びの核心である。

【著者プロフィール】
マン点(まんてん) マンションアナリスト。一級建築士。20年以上続けている不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」の管理人
X(旧Twitter):https://x.com/1manken

デイリー新潮編集部

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