「分譲型シニアマンション」vs.「サ高住」どっちがベター? …の前に把握しておきたい意外な“落とし穴” 検索サイトでは分からない「老後の住まい」の“リアル”とは

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認知症になっても入居を続けることは可能?

 気になる点を上げるとすれば、それは一般的なマンションと違い管理費が高いことだ(次図)。

 たとえば都内の中古マンションの管理費は月額1万2150円(東日本不動産流通機構が2025年5月26日に発表した2024年度の東京都の管理費データを50平方メートル換算)。

 これに対して、「LIFULL介護」に表示されていた都内7件の管理費は50平方メートル換算で3万800~13万9100円(中央値6万2750円)と、一般的なマンションの2.5~11.4倍になる。さらに「その他費用」として、「生活支援業務費」や「レストラン運営金」などの名目で毎月の負担が発生する場合がある。

 人手不足やインフレが進む世の中で、この先もずっと同様のサービスが同じ価格で受けられるかどうかは気を付ける必要がある。値上げが続いた場合、負担に耐え切れなくなる住人が出てくる可能性も考えられる。

 もう一つ気がかりなのは、シニア向け分譲マンションの購入後に、入居者が認知症を発症した場合の対応だ。日々の生活に支障があっても、マンションが提供する生活支援サービスを利用することで、一定程度は住み続けられる。ただ、販売中のシニア向け分譲マンション63件のうち、半数近い物件が認知症の人を「受け入れ不可」としていることは知っておきたい(次図)。

 仮に入居後に認知症を発症した場合、分譲マンションの所有権は引き続き認知症になった本人のものではあるが、所有権を行使するための意思能力(判断能力)を失うと本人の財産は事実上凍結された状態になり、マンションを売却して介護費用に充てるといったことができなくなってしまう。

 いずれにせよ、健康寿命が男性では72.57歳、女性では75.45歳(2022年厚労省データ)であることを考えれば、65歳に購入した場合に住めるのは7~10年程度で、最後は介護施設への転居を迫られる可能性があることは知っておくべきだ。

「サ高住」の高齢者生活支援サービスにはバラつきが

 一方のサ高住は、「高齢者住まい法」に基づく賃貸型住宅のことで、「見守り・生活相談」が義務となっており、介護サービスとの連携を売りにしている。

 高齢者住宅協会が運営しているサイト「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」に登録されているサ高住は、約8000棟・29万戸(2025年9月末現在。同協会発表)ある。大阪、北海道、首都圏に偏っているとはいえ、分譲型シニアマンションと比べるとその数は桁違いに多い。

 同サイトに表示されている都内のサ高住の件数は222件(2025年10月22日現在)。料金相場等はけっこうなバラツキがみられる(次図)。

 入居時費用(0~3064万円、中央値19万円)は0円が最多(全体の24%)で、手軽な賃貸型が目立つ。月額費用(7.5~241万円、中央値17万円)は15~20万円に集中(32%)。総戸数(2~186戸、中央値45戸)は中小規模(50戸未満)が主流(62%)で、大規模施設(100戸超)はわずか3%である。

 都内のサ高住222件の「高齢者生活支援サービス」の提供割合の内訳は次図の通り。

・「状況把握・生活相談」は全ての施設で提供されており(自ら79%、委託15%、併用6%)、法令遵守が徹底されている。夜間もスタッフが常駐しているのは113施設(51%)。

・「食事の提供」は91%が実施しており、委託(60%)が主流。給食業者にアウトソーシングし品質を安定させている。

・「入浴等の介護」は49%が提供せず、「調理等の家事」は43%が提供していない。多くの施設が自立型中心で外部依存、つまり自立した高齢者を対象とし、介護や家事は訪問介護など外部サービスに頼っている実情が垣間見える。

・「健康の維持増進」は35%が提供せずで、医療併設やフィットネス完備の高級施設と、サービスが手薄な低価格施設との品質差が顕著だ。

・レクリエーションなどが該当する「その他」のサービスは19%が提供せず、こちらも充実型と簡素型で二極化しているようだ。

 分譲型シニアマンションもサ高住も、“老後の夢”を売る商品だが、その落とし穴は深い。次項で詳しくまとめる。

次ページ:それぞれに潜む“落とし穴”

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