“心優しきゲイ男性”をみごとに熱演 「56歳イケメン俳優」の新境地
立ち居振る舞いがさらりと優雅、知的でハイソな印象をもたらす一方、狡知にたけた人物や権力になびく腰巾着の役もしっくり。やや高い位置に鎮座ましましていたイメージのミッチーこと及川光博が地上に降りてきた。今回は主演、ゲイの中高年男性役である。ホームドラマだが、家族モノではない。むしろ恋愛モノとしての心情描写と一人語りは、独身や独居の人間に染み込んでくる要素が多め。「疑似家族」とも違うし、動物も多数、全体的にほんわかしとるが切実さも味わえるのが「ぼくたちん家(ち)」だ。
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ミッチーが演じるのは動植物園で働く50歳の波多野玄一。心優しきゲイという設定だが面倒なことにそこそこ巻き込まれていくお人よしで、そこそこ人を巻き込んでいくお節介でもある。
玄一は若い頃ミュージシャンを目指したものの、デビューの条件が「ピチピチのタンクトップを着て、普段使わないオネエ言葉で歌え」だったため、断った過去がある。独り身の寂しさが身に染みてくる50歳、ファミリーサイズのアイスクリームを一緒に食べてくれる人が欲しいと願うお年頃。
捨てられた犬や鳥や亀を世話するものの、ペット禁止のアパートを強制退去させられ、不動産屋の友人(田中直樹)の紹介でボロアパートに。寛容な大家(坂井真紀)の元で新たな生活を始めるも、同じアパートにはなにやらワケありの中学生・楠(くすのき)ほたる(白鳥玉季)が一人で住んでいて。ほたるから「3000万円で、親のフリをしてほしい」と半ば強制的に契約させられる。というのも、ほたるの父(光石研)は離婚して、別の家庭を築いている。母(麻生久美子)は会社の金を横領し、現在逃亡中。そんな家庭環境で自暴自棄になってもおかしくないのだが、想定外の落ち着き。トーヨコに通ってはいるが、家庭の事情を抱えた子同士で、居心地の良さがあるからだ。
偽家族の話が降りかかる一方で、偶然出逢ったオープンなゲイの作田索(さく・手越祐也)に一瞬で恋をしてしまう玄一。索は恋人の吉田亮太(井之脇海)との同棲を解消し、目下車中泊の暮らし。しかも索は中学教師で、ほたるの担任という偶然。孤独や絶望、諦観を抱え、居場所がなかった三人が集まり、安寧の暮らしを模索していく。夫婦、親子、家族という日本語の区分に違和感や疎外感を覚える人に、新しい人間関係の呼称を提案するドラマになるといいなぁと思う。
ミッチーの細かい表情変化や超高速二度見は、玄一の人の良さや面白さをよく表しているし、「僕」と「俺」の細かい使い分けも興味深い。白鳥の大人びた表情は複雑な背景を映し出す。あしき大人を寄せ付けない、聡明な役がぴったり。手越は、若さや無邪気さが寵愛された時期を過ぎたゲイの陰りを体現。このトリオに意外性があって新しいかも。
面白いといえば、玄一がつい通っちゃう結婚相談所のカウンセラー・百瀬まどか(渋谷凪咲)が名言で励ますところ。逃亡中の母ものんびり旅気分だし、母を追う刑事・松梅子(土居志央梨)も案外のんきなところな。








