1万冊の蔵書を“廃棄”が話題に…愛書家が大事に保管してきた「珍しい本」が実は“高く売れない”納得の理由

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珍しい本ほど値段がつかないことも

 本を売りやすくするためには、A氏のようにアンダーラインなどの書き込みをせず、丁寧に読むことである。これは鉄則中の鉄則といえよう。もちろん、一部の本はそういった書き込みがあっても値段が付くものもあるが、ない方がいいのは言うまでもない。また、タバコ臭の強い本も、近年は避けられる傾向が強いようだ。

 また、“珍しすぎる本”ほど、値段が付かないことがあると心得たい。ブランド品の買い取り店にバッグや腕時計を売ったことがある人はわかると思うが、ルイ・ヴィトンやロレックスの定番商品は販売実績のデータがあるため、5~10分程度で買い取り価格が出る。回転率が高い売れ筋の商品なら、売値の70~80%で買い取ることもままある。

 ところが、現存数が極端に少ない本は、市場での取引価格が存在しないケースが多い。そのため、古書店も特別な知識と思い入れでもない限りは、高額での買い取りを渋る傾向がある。ましてや、専門書は回転率が極端に悪いことが多く、長期在庫になりやすいため、資金力に乏しい古書店は売値の10%程度で引き取る例もあると心得ておきたい。

 一方で、どうしてもこの本を扱いたいという古書店に出合えれば、双方が納得のいく価格で引き取ってもらえることもあり得る。蔵書を後悔なく片付けるためには、古書店巡りや店主との信頼関係の構築が必須といえよう。いずれにせよ、一朝一夕にできるものではなく、それなりの時間がかかると考えておきたい。

愛好者同士のネットワークを作る

 愛好家同士のネットワークを作っておくのも得策だろう。同じ趣味の知り合いが多ければ、本を譲り合うことができる。実際、鉄道ファンや漫画好きの間ではそういったコミュニティを作っている例もあり、亡くなった後に友人が遺品整理に訪れることがある。コレクションを、価値をわかっている人に引き継げる最善の策といえるだろう。

 ちなみに、筆者も様々な品物のコレクターなのだが、家族に死後のことは伝えてある。コレクションを生きているうちに売るつもりはないが、死後はスムーズに業者に買い取ってもらい、次の持ち主に引き継がれるよう考えている。貴重な蔵書やコレクションを所有している人は、普段から家族と話し合いをしておくのがベストである。

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