「ママ、酔っ払ってごめんね」…「鳥取連続不審死」獄中死の元死刑囚、逮捕前日に古巣のスナックで見せた酒豪ぶり
「口が上手く、自己中心的で暴力的」
その後、Xは複数の詐欺と窃盗で起訴され、2010年9月に鳥取地裁で公判を迎えた。検察側の冒頭陳述によれば、妻子ある会社員だったXは2007年12月頃に上田と出会い、翌年1月頃から交際を始めたという。
〈「家内とのすれ違いで、知らず知らずのうちにあいていた空洞が、上田に出会って埋められました」〉(「週刊新潮」2010年10月7日号より、以下同)
2月頃、上田が自身の妹になりすました電話で虚偽の妊娠を告げられた。信じたXは仕事と家族を捨て、4月頃から上田との同居を始めたが、その後は悪夢である。
〈「頭の回転が速くて口が上手く、自己中心的で暴力的です。生活費を工面しないと激昂します」〉
〈「顔をパンチされて唇が切れ、差し歯が折れたこともありました。朝から晩まで“金、金”と言われて苦しかった。騙されて何もかも失って悔しいです」〉
Xは「騙されていた」「生活費の工面を執拗に迫られた」として執行猶予付き判決を求めたが、結果は懲役3年の実刑判決だった。
2017年8月に死刑確定
上田美由紀は複数の詐欺と住居侵入・窃盗1件、強盗殺人2件で起訴された。この強盗殺人2件は、2009年10月上旬に摩尼川で遺体となって発見されたBさん(57)と、同年4月に日本海で水死したCさん(47)である。
2012年9月25日、裁判員裁判として公判が始まった。鳥取地裁の一般傍聴席23席に対して希望者は1115人。日本中が注目する中、上田は強盗殺人の罪を否認した後は黙秘を選び、弁護側は一緒にいた元会社員、すなわちXが殺害したと主張した。
同年12月5日の判決公判も一般傍聴席の倍率は約55倍に膨れ上がった。ここで裁判員6人(補助裁判員4人)が下した決断は死刑。鳥取地裁での死刑判決は、記録が残る1978年1月以降で初のことである。
上田は即日控訴。控訴審は2013年12月に広島高裁松江支部で始まった。上田は自らの言葉で無罪を主張したが新たな証拠は出ず、逆に検察側の激しい反論もあって供述の不合理な点が露呈。広島高裁松江支部は2014年3月20日、一審の死刑判決を支持し、弁護側の控訴を棄却した。
上田の即日上告を受け、裁きの場は最高裁判所に移った。2017年6月29日の上告審弁論を経て、2017年7月27日に最高裁第1小法廷は上告棄却。弁護側は上告棄却判決の訂正申し立てを行ったが、同年8月23日に棄却が決まり、死刑が確定した。
***
第1回【被害者に「26歳です」とウソを…09年「鳥取連続不審死」元死刑囚 “自衛隊員と幸せな結婚をした女”はなぜ死刑に至ったのか】では、コンビニ店員が見た変死男性と上田元死刑囚の姿、経営するスナックで彼女を雇った親族らの証言を伝えている。
[3/3ページ]

