「クマが世田谷区に出没する可能性も」 すでに青梅や八王子で目撃情報が… 「移動距離は1日10キロ」

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【前後編の後編/前編からの続き】

 10月に入ってから連日報じられている、クマによる人身被害。痛ましいことに、すでに死亡者は過去最多数を記録し、桃源郷だったはずの名湯の地でも死亡事故が発生してしまった。もはや誰にも“対岸の火事”とは呼べない、クマの驚愕(きょうがく)すべき実態に迫る。

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 前編【「人里で母グマを駆除すると、子グマが“集落依存型”に…」 クマによる人身事故大量発生の理由とは】では、クマによる人身事故が急増している理由について報じた。

 それにしても、山奥から里山、そして市街地へと、果たしてクマはどのように移動しているのだろうか。

「多くの川は森から始まり、農作地が広がる里山を通り、市街地へ流れ出ますが、これがクマの通行路にもなっているようです。河川敷には丈のある植物が生い茂る河畔林と呼ばれる地帯があり、クマが身を隠しながら移動するのに適しています。また、川沿いには木の実などクマが食べる物が豊富です」(岩手大学農学部の山内貴義准教授)

 川と相性が良いのは実証されている。

「岩手県の農村部では、一面に広がる田んぼのど真ん中にある小学校の校庭に、いきなりクマが現れるということが起こります。田んぼは見晴らしが良いので、どこから来たのか地元の方は不思議に思う。そこでカメラを設置して調査すると、クマは身を隠せるような川や用水路を通っていることが確認されたのです」(同)

 ちなみに、クマが現れた群馬県のスーパーも、川が近くを流れている。仙台市で一度に5頭ものクマが発見されたのも河川敷だった。

“人間は自分たちに何もしてこない”と学習

 もっとも、現れるだけならさして問題ではない。恐ろしいのは、あまりに多くのクマが人を襲っていることである。

「どうして人を襲うような一線を越えたクマが増えたのか、科学的な結論は出ていません。ただ、市街地に出て、しかも人間を恐れないクマの個体数が増えていることはたしかです」(山内氏)

 従来、クマは臆病であるといわれてきたが、

「今年のクマは人間の生活音や自動車の音にも警戒心が薄いようです。こうしたクマが市街地で人と接する機会が増え、人に慣れていく中で、さらに行動がエスカレートしていったと考えられます」(同)

 とした上で、

「2年前の秋にも木の実の大凶作を受けて、市街地にはクマが大量に出没し、秋田県と岩手県では過去最多の人身被害数を記録しました。この大出没に参加したクマが、“人間の近くに行けばおいしいものがある”“人間は自分たちに何もしてこない”と学習した可能性が考えられます。また、このときには親子連れが多かったため、子グマにとっては市街地が生活範囲の一部と映っているのでしょう。クマは学習能力が高く、一度味をしめたエサ場には何度もやってくる習性もあります」(同)

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