住宅価格“沸騰”時代の「マンションvs.戸建て」論争 1.3億円超の都心に対し郊外では「新たな動き」も

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一戸建ての価格上昇はマンションと比べると限定的

 いっぽう、郊外エリアでは別な動きもある。

「この数年で、一戸建てを探す人の割合が増えてきた」

 という話も郊外の不動産会社から耳にする。マンション価格の上昇に収入の伸びが追い付かず戸建てを検討する人も目立つという。新築マンションの価格上昇の波は、東京23区だけでなく神奈川県、埼玉県、千葉県にも波及。2025年度上半期の新築マンション価格は、東京都下で6884万円、神奈川県で7838万円、埼玉県で6598万円、千葉県で5948万円。神奈川県、埼玉県では、前年同期比の上昇率が2割超で、郊外においてもマンションを値ごろ感のある価格で購入することが難しくなっている。

 新築マンション価格上昇の影響は、購入者層の変化にも表れている。住宅金融支援機構による2024年度フラット35利用者調査によれば、新築マンションの平均購入価格は2023年度の5801.2万円から2024年度の6569.3万円へと768.1万円も上昇した。

 購入者の平均年齢は46.4歳から47.2歳へと変化。世帯年収は、2023年の944.4万円から1044.9万円へ約100万円アップしている。手持金も前年の1396.9万円から1833.3万円へと上昇しており、新築マンションを購入するためには、今まで以上に一定の世帯年収と余裕資金が必要なことが見て取れる。

 次に、建売住宅を見てみよう。首都圏における2024年度フラット35建売住宅融資利用者のデータを見ると、購入価格は前年の4199.3万円から163.8万円上昇し4363.1万円に。購入価格の対前年上昇率は、新築マンションの13.2%に対し建売住宅は、3.9%と小さいことが分かる。

 建売住宅の購入者の指標を見ると、平均年齢は41.9歳で前年度の42.2歳よりも若く、平均家族数は、3.1人(マンションでは2.3人)。世帯年収は、673.5万円で前年度の659.6万円よりも上昇しているものの、新築マンション購入層と比べると、こちらも伸びが小さい。

 住宅面積は平均97.6平方メートルとなっており、新築マンションの平均62.2平方メートルよりも余裕がある。インフレによって、家計の実質的な所得は上がっておらず、住宅購入希望者の目が、価格の上昇度合いが小さい建売住宅に向くのも理解できる。

 マンションと戸建て、どちらにもそれぞれの良さがある。一般的にマンションは、立地に加えて耐震性、耐久性、防災性、セキュリティなどの面で戸建てよりも優れる。「パークタワー渋谷笹塚」のような共用施設が充実した大規模マンションなら、ホテルライクな暮らしも可能だ。

 いっぽう、戸建ては、空間が広いことやプライバシーが確保しやすいこと、庭が持てることなどの魅力がある。また、管理費や修繕積立金が不要で、車保有なら駐車場代もかからない。一戸建てとマンション、どちらを選ぶかは、家族のライフスタイルやライフプランをよく考えたうえで決めるべきだろう。

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