新築マンションは「5年間転売禁止」 千代田区長の“異例の要請”に業界人の本音は
「データや根拠を示してほしい」
東京・千代田区の樋口高顕区長が、「不動産協会」に異例の要請を出したのは7月。一部の新築マンションについては原則5年間転売できないようにすることと、同一建物において同一名義の者による複数物件の購入を禁止するように求めたことがニュースでも大きく報じられた。不動産が高騰している東京の、そのまた中心にある千代田区のトップが言い出したものだから、大いに話題になったのである。
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ところが、その後どうなったのかについては、あまり知られていない。
不動産協会に聞くと、
「まず、区長の要請は私たちに事前の知らせがなく、内容もネットニュースで知ったほどでした。そこで、翌週に区の担当者に来てもらって説明を受けたのです。しかし、私たちからすると腑に落ちないところがあって、改めて質問を送りました。例えば千代田区は、〈投機を目的としたマンション取引〉があるとしていますが、データや根拠を示してほしいというものです。しかし、今も明確な回答がありません」(担当者)
協会は9月19日に記者懇談会という形で、一定の見解を示している。いわゆる投機的取引は限定的なものであって、不動産の値上がりの主な原因は土地代や建築費など原価の高騰からくるものだと説明。ただ、投機的な短期転売そのものについては好ましくないと表明した。
デベロッパーの見解は
デベロッパーの担当者が解説する。
「樋口区長の要請は実態を反映していません。千代田区は新規のマンションがなかなか供給されない場所なんです。買う人だって、企業のオーナー経営者や地方の病院の理事長といった方が、出張で使うためというケースが多い。そもそも、一般の方はマンションを買おうと思って千代田区を選ぶでしょうか。選ぶとしたら世田谷とか中野といった住宅街ではありませんか」
調べてみると2024年度に東京23区で発売されたマンションは8272戸(不動産経済研究所調べ)。東京都のサイトでは、同年に千代田区内で完成した中規模以上の分譲マンションは2棟だけだった。「パークリュクス神田多町」と「ザ・パークハウスグラン三番町26」がそれで、合わせて136戸しかない。全体のわずか1.6%である。
そこで、千代田区に聞いてみると、
「今回の要請は多くの方の共感を得られたと感じています。誰かが動き出さなければならない中で、千代田区が最初の一手を打ったと考えています」(広報広聴課)
「異例の要請」がパフォーマンスで終わらなければいいが。


