テレビの“オワコン”化が加速 「俳優」に続き「芸人」たちが配信メディアに本格参戦

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自由な雰囲気

 配信メディアでバラエティを作る利点は、地上波放送に存在する制約から解放されることだ。地上波では放送コード、スポンサーの意向、公共性への配慮といった数多くの制限が存在している。少しでも過激な表現があればクレームが入ったり、謝罪に追い込まれたりする。結果として、地上波番組の内容はどんどん丸くなっていて、刺激的なものが作りづらくなっている。

 一方、配信番組ではスポンサーに配慮する必要もないし、放送時間の制限もない。作り手がのびのびと番組作りに打ち込むことができる。この自由な雰囲気は出演者にとっても魅力的である。

 バラエティに出演する芸人側の意識の変化も見逃せない。近年、芸人たちは地上波だけに頼らない活動を積極的に模索している。YouTubeチャンネルを開設したり、ポッドキャストやライブ配信アプリを活用したり、自らの手で発信をする流れが広がっている。

 そんな彼らにとって、配信プラットフォームでの大型番組は、地上波よりも柔軟な環境で自分たちの笑いを表現できる貴重な場になっている。地上波だけが唯一の戦場だった時代は終わり、さまざまな配信プラットフォームが乱立する時代になった。

 芸人は舞台に立って、入場料を払ってくれた観客の前で芸を披露するのが本来の仕事である。いわば、課金したユーザーにコンテンツを発信するのがもともとのあり方なのだ。そう考えると、ここ数十年にわたって、芸人は地上波テレビという無料のメディアに過剰適応してしまっただけであるとも言える。

 作り手にとっても芸人にとっても、配信バラエティは「面白いものを作る」という原点にかえるための場所として重要なものになっているのだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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