大谷翔平も追いつけない「MLB史上最高の選手」 ウィリー・メイズとは何者か(小林信也)

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 日本のファンの多くが、「もはや大谷翔平こそMLB史上最高の選手ではないか」と考えているかもしれない。もちろん“二刀流”では大谷が孤高の存在だ。が、攻走守の分野に限れば、長い歴史を誇るMLBにはもっと上がいる。

 その一人が「MLB史上最高のコンプリート・プレーヤー(完璧な選手)」と呼ばれるウィリー・メイズだ。

 メイズはニグロ・リーグで2年間活躍した後、1950年にニューヨーク(現サンフランシスコ)・ジャイアンツと契約。2年目の51年に3Aで35試合に出場、.477の高打率をマークし、5月25日にメジャー昇格を果たした。

 最初は12打数ノーヒット。15打席目に初安打・初ホームランを記録したが、その後も不振が続き、26打数1安打になった時、「マイナーに戻してください」とメイズがレオ・ドローチャー監督に直訴した話が伝わっている。だが監督は、「あしたもあさってもずっと君はセンターを守るんだ」とメイズを使い続けた。その年、打率.274、20本塁打で彼は新人王を獲得する。

 実働22年間、メイズの通算成績を紹介しよう。

 通算2992試合に出場し、本塁打660本、3283安打、打率.302、338盗塁、1903打点、2062得点。30-30(本塁打30本、盗塁30)も2年連続で達成している。

 参考のため大谷の数字を挙げよう。通算1018試合出場、本塁打280本、1050安打、打率.282、165盗塁、669打点、708得点。まだメイズの半分にも達していない。

 アメリカでは、「兵役がなかったら、ベーブ・ルースの本塁打記録を最初に抜いたのはメイズだった」と言われる。全盛期の52年途中から53年閉幕まで朝鮮戦争による兵役で欠場した。その間約270試合に出ていたら、計55本は打ってルースを超えていただろう。

 私がメイズに特別な敬意を覚えるのは、ジャイアンツの一員として70年春の日米野球で来日した時、メイズを目の前で見たからだ。

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