阪神が「日本シリーズ」目前に“最大の正念場”…「ドラフト会議」が左右する“常勝タイガース”に必要な人材とは
「20年ドラフト選手」が大活躍
日本シリーズを目前に控えた阪神タイガースにとって、今秋のドラフト会議は近未来をかけた分岐点になりそうだ。
クライマックスシリーズ(以下=CS)・ファイナルステージの予想は、リーグ優勝を決めた9月7日以降、個人タイトルのかかった選手以外は「調整」に入っていたため、「トラ劣勢?」の声が大半を占めていた。だが、実際は違った。一気に3連勝を飾り、阪神が日本シリーズ進出を決めた。
「投打ともに、ペナントレースを牽引してきた主力選手が、そのまま短期決戦でも活躍した印象です」(在阪記者)
CSファイナルステージ第1戦は先発の村上頌樹(27)が粘りのピッチングを見せ、先制点は主砲・佐藤輝明(26)のバットから生まれた。第2戦は最優秀防御率のタイトルを獲得した才木浩人(26)こそ本調子ではなかったが、その力投が延長10回の森下翔太(25)のサヨナラ2ランを呼んだと言っても過言ではない。特に第1戦で、近本光司(30)が相手バッテリーの意表を突く三塁盗塁を成功させ、「このシリーズの流れを作った」との声も多く聞かれた。
「今季の独走優勝の基盤となったのは、20年のドラフト会議です。佐藤、伊藤将司(29)、村上、中野拓夢(29)、石井大智(28)を指名した当たり年で、ファンの間でも『神ドラフト』と呼ばれています」(前出・同)
22年1位の森下も1巡目指名で巨人と競合し、2回目の入札で得た選手だ。佐藤も巨人を含めた4球団競合の末に引き当てており、今日の強さは「ドラフトの勝利」でもある。しかし、才木は今オフのポスティングシステムによる米球界挑戦が決まったとの一報もあり、佐藤がそれに追随するのも時間の問題と言われている。国内FA権を取得した近本に関しても「残留交渉は5年25億円がスタート」とされる一方、「来季32歳になり、いつまでリードオフマンとして貢献してくれるのか」といった懸念も伝えられている。
阪神は“ドラフト勝者”ではあるが、「主力選手の喪失と年齢」という問題も抱えている。今秋のドラフト会議ではそれを念頭に置いた指名が行われる。いや、指名に失敗すれば、今季の強さは“目減り”していくだけになってしまう可能性が高い。
「球団内には、今年の強さが3年先まで持つのかと心配する声もあります。才木の米球界挑戦が本当なら、即戦力の先発投手を指名しなければなりません。まして、今季15試合に先発したデュプランティエ(31)の残留も確実になっていません」(前出・同)
今年は「投打に逸材揃い」
今年のドラフトは投打ともに逸材が多い“当たり年”だ。右投げの投手では青山学院大学・中西聖輝(21)、東北福祉大学の堀越啓太(22)、東洋大学・島田舜也(22)が高く評価されているようだが、花園大学の藤原聡大(21)を推す声も多く聞かれた。闘志むき出しで150キロ台後半の速球を投げ込むタイプで、ピンチの場面でも三振が取れるのが最大の長所だ。
「藤原は阪神が最初に見つけた逸材なんです。本格的な投手の練習を始めたのが高校2年生の秋で、頭角を現したのは大学3年生になってからでした。花園大学は京滋リーグの所属で、注目されるのは関西の他主要リーグばかり。にもかかわらず、今年5月のびわこ成蹊スポーツ大戦には阪神スカウトが5人態勢で藤原をチェックしていました」(リーグ関係者)
しかし、4年生になった今年は他球団も藤原詣でを始めてしまい、もう「隠し球」とは呼べなくなった。巨人、広島、ソフトバンク、中日のスカウトも「上位指名で消える」とコメントしていたので、「最初に見つけた」意地を通すのであれば、2巡目までに指名しなければならないだろう。
「左投手なら、中央大学の岩城颯空(22)がいます。スライダーのキレもバツグンです。先発タイプですが、奪三振率が高いのでクローザーの岩崎優(34)の後継者になれるかもしれません」(アマチュア野球担当記者)
中央大学であれば、OBの森下が活躍しているので入団交渉もスムーズに進むだろう。
阪神のチーム防御率は12球団トップの2.21。投手補強は「将来性の高校生」と絞り、佐藤や来年32歳になる大山悠輔の後継者を1位入札する可能性のほうが高い。大学ナンバー1内野手、強打堅守の創価大学・立石正広(21)を「トラの本命」と見る向きも強い。
「立石が獲れたら三塁を守らせ、佐藤を正式に外野にコンバートすることも可能です。メジャーリーグ行きを目指す佐藤にとっても、あまり上手ではない三塁を続けるよりも外野で肩の強さを見せたほうがプラスです」(前出・在阪記者)
とはいっても、立石の指名重複は必至。すでに広島が1位指名を公表しているが、他球団は今も複数人態勢での視察を続けている。4年生になった今季はセカンドを守り、さらに評価を上げたようだ。
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