「W杯出場も、海外経験もないのに…」と選手からバカにされた森保監督 「ブラジル撃破」までの7年間 「海外組がホテルを出る時は玄関まで見送る」サラリーマン的マネジメント

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 サッカーの日本代表、「森保ジャパン」が王国ブラジルを撃破した。10月14日に行われたキリンチャレンジカップで、3-2で逆転勝ちを収めたのだ。振り返れば、2022年W杯カタール大会でドイツ、スペインに勝利。一昨年もドイツを再び下し、そして1989年の初対戦から36年間、過去13回の対戦で1度も勝てなかったブラジル代表も初めて下した。W杯優勝経験国相手の4試合で3試合が逆転勝ちという事実は、フロックではなくチーム力がある証しでもある。就任8年目を迎えた森保一監督は、なぜチームをここまで成長させることが出来たのか。理由を探った。

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トルシエとは正反対

 この7年間、森保監督は代表チームで一度も怒鳴り散らしたことがない。チームが緩んだとみるや「喝」をいれることもしていない。かつて日本代表を率いたフィリップ・トルシエやヴァイッド・ハリルホジッチ監督の姿からすれば、正反対だ。本人に尋ねると笑って言う。

「なぜ、怒らなきゃいけないんですか? ここに招集する選手たちはトップクラスの選手たちばかり。そんな必要は全くありません」

睡眠時間はなし

 JFA関係者も言う。

「森保さんがこれまでの監督と違うのは、選手に対して“上から目線”の振る舞いがないこと」

 その良い例が代表合宿中のルーティーンで見て取れる。合宿期間中の森保監督の睡眠時間はほとんどない。

「試合が終わると、代表チームは宿泊先のホテルで解散になります。そのあとすぐに海外組の選手たちは、所属クラブに戻るため深夜や早朝の飛行機でチームを離脱します。森保さんはその全員を必ず部屋から降りてきて玄関まで見送ります。過去の外国人監督の中にはホテルのバーで早朝までワインを飲んでいた監督もいました」(同)。

 スタッフに対しても、「お疲れさん」の声掛けを欠かさない。メディアに対しても、

「惨敗に終わっても取材拒否などはしない。会見会場に来ると、深々と一礼、会見を終えて去る時もまた深々一礼。ブラジル戦後の会見では、森保さんが入ってくると、記者から自然と拍手が湧き上がっていました。代表の会見ではこれまで見たことのない光景でした」(古参のサッカー担当記者)

堂安や久保は…

 そもそも、就任当初、森保監督には、海外組の選手たちを中心に、否定的な声も上がっていた。

「俺たちは海外のトップレベルでやっているのに監督は海外移籍の経験すらない。W杯に出場したこともない、と。とりわけ鼻っ柱の強い堂安律や久保建英の扱いには苦慮していました」(同)

 また、試合の采配や戦術にも懐疑的な意見が多かった。とりわけ選手交代の際の引き出しの少なさが指摘されることが少なくなかった。

「苦しい局面になると、選手を一気に替えることが多く、行き当たりばったりの采配に見える。この傾向はいまも変わりません。ゲームメイクの点から考えると決して“名将”とは言えません」(同)

 さまざま批判されながらも、森保監督がそれでも続けてきたことがある。選手との1対1の対話だ。メールやLINEを利用して事足りる時代にも関わらず、現地視察を重視してきた。

「海外はもちろん、選手招集に関わるJリーグの試合は、必ず現場に足を運ぶ。これまでの代表監督のように“国内組軽視”の批判が聞こえてこないのはそれが理由です」(同)

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