いまだプロ未勝利「根尾昂」は“現役ドラフト”の目玉となるのか? 球団創設90周年を控えた「中日ドラゴンズ」井上監督の胸中は
来季90周年となる中日の決意
来季、球団創設90周年を迎える中日ドラゴンズが動き始めた。90周年と言えば、2024年シーズンの巨人、今季は阪神がそのメモリアルイヤーをリーグ優勝で飾っており、中日も「4年ぶりの最下位脱出」という現状には、満足していないはずだ。中日はチーム改革に乗り出す。その一端が垣間見られたのは、井上一樹監督(54)が大島宇一郎オーナー(60)へシーズン報告を行ったときだった。
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「井上監督が大島オーナーを訪ねたのは10月6日でした。会談後、大島オーナーは『昨年までとは違う粘り強さを見せてくれた』と語っており、井上体制に一定の評価を与えているようでした」(名古屋在住記者)
今季は63勝78敗2分けの4位。優勝した阪神とのゲーム差は「23」。だが、対戦成績は13勝12敗と、セ・リーグで唯一、Vチームから勝ち越しを決めた。とはいえ、2位DeNA、3位巨人には大きく負け越しており、ホームゲームでも勝率5割を切ってしまった。
「今年の総観客動員数は、主催試合72試合で252万832人。250万人を突破するのは星野仙一監督が率いてリーグ制覇した99年以来です。前政権でもそうでしたが、勝敗に関係なく、地元名古屋のファンが球場に足を運んで応援するようになりました」(前出・同)
そんな“地元愛”を意識しての発言だろうか。井上監督は会談のなかで「地元から1位指名した若手の底上げ」を約束したという。18年1位の根尾昂(25)、19年の石川昂弥(24)を指しての発言である。だとすれば、メモリアルイヤーのキーマンはこの2人の地元出身選手ということになるが、正反対の情報も聞かれた。
「シーズン終盤になると、各球団の編成スタッフは『探り』を入れます。プロ野球チームの補強というと、ドラフト会議、外国人選手の獲得が真っ先に浮かびますが、ファームでチャンスを待ち続けている他球団の逸材や、環境を変えれば戦力になりそうな中堅、若手を見出し、トレードや現役ドラフトに備えるのも、編成スタッフの重要な役目です」(在京球団スタッフ)
全試合ではないが、各球団の編成スタッフはファーム戦もチェックしている。その足で集めたデータの正確さが交換トレードの成否につながるのだが、昨今では「現役ドラフト」を想定してのスカウティングにも重点を置くようになったそうだ。
「伸び悩んでいる中堅、若手がチームに残って『壁』を突き破るのは本当に大変なんです。些細なミスをしても、首脳陣は『またか……』とマイナス目線で見てしまうからです。新しいチームに行けばそれはなくなります。細川成也(27、DeNA→中日)や田中瑛斗(26、日本ハム→巨人)が、新チームでブレイクしたのもそのためです」(前出・同)
各球団は「第2の細川」らを見極めようと必死だ。その視察や情報収集の場で交わされていたのが、「根尾はどうなんだ?」の声。複数の球団が根尾に興味を持っており、「ウチに来れば覚醒させてみせる」と見ていた。それも、投手としてではなく、野手への再々コンバートも視野に入れているような口ぶりだった。
リリーバー・根尾の強さとは
「根尾が投手にコンバートされたのは、22年のセ・パ交流戦後。就任1年目の立浪和義監督(56)と直接話し合ってのことです。ただ、当時の野手・根尾の教育係だった荒木雅博・内野守備走塁コーチ(48)は立浪監督からひと言の相談もなく、独断であったことをプロ野球OBのYouTubeに出演するたびに明かしています。同様に、ヤクルトOBの宮本慎也氏、元巨人スカウト部長だった岡崎郁氏もショートのレギュラーに育て上げる自信があったと語っています」(スポーツ紙記者)
投手専念から4年目の今季、一軍登板は僅か4試合。トータルで5回3分の2しか投げていない。防御率は7.94、プロ初勝利もまだ挙げていない。
「昨年オフ、井上監督は根尾の背番号を7から30に変更させました。二軍監督として、彼が毎日、早出、居残りの練習を続けていたのを見ています。何とかしてやりたいとの親心と、野手への未練があるなら捨てろという意味でした。力をセーブして長いイニングを投げる先発よりも、全力投球をする現在のリリーフのほうが合っているようです」(前出・名古屋在住記者)
一軍には定着できなかったが(4登板)、ファームでは今季も42試合に登板しており、防御率は2.68。3勝3敗1セーブだ。ウエスタン・リーグの全投手成績表を確認すると、根尾の登板試合数はリーグ2位だった。
「二軍戦の出場は、不振の一軍選手の調整が優先されます。入団1、2年の上位指名選手ならともかく、42試合も投げさせてもらえるなんて、根尾は恵まれていると思います」(前出・同)
他選手が羨むほどのチャンスをもらいながら、一軍に定着できなかったということは、やはり、投手としては限界なのか。来季26歳になる年齢からしてもこれ以上の伸びしろがあるようには見えないが、中日が「日本一」に輝いた10月4日のファーム日本選手権を指して、こんな意見も聞かれた。
「16対1の大差で、中日は最後の守りに就きました。育成の森山暁生(20)が9回を締める予定でしたが、緊張したのか2点を奪われ、一死満塁にしてしまいました。緊急登板でマウンドに上がったのが根尾です。根尾はブルペンを引き揚げていましたが、大急ぎでキャッチボールをし、そのままマウンドに向かいました」(現地メディア関係者)
つまり、リリーバー・根尾は「短時間で肩を作れる」という、首脳陣からするともっとも有り難い“頑丈な肩”を持っているわけだ。「ブルペンに一人いたら便利な投手」かもしれないが、内野手としての素質を惜しむ声もいまだ消えていない。
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