若手芸人が「ゴールデンMC」になれないワケ 霜降り・せいやの抜擢でテレビ業界は変わるのか

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

求められる「格」

 さらに言えば、番組のMCには「格」というものも求められる。長年芸能界で活躍しているベテラン芸人は、仕事を通して多くのタレントと関係性を築いているので、「あの人の番組だったら出ます」というふうに判断されて、ゲストとしてタレントが集まりやすくなる。キャリアの浅い若手芸人の場合、それほど多くのタレントと信頼関係を築けていないため、出演するタレントの幅が限られてしまう。

 特に、最近のバラエティでは、普段はそういう番組に出ていない大物俳優などが、番宣のために出演したりすることも多い。そういう場合でも、MCに一定の格が備わっていれば、俳優本人もその事務所も、安心してオファーを受けることができる。芸能界は義理と人情で成り立っている世界であり、長年そこで信頼を築いてきた人が有利になることは間違いない。

 そうした状況の中で、せいやのような比較的若い芸人がゴールデン・プライム帯のMCを務めることには、単なるキャリアのステップアップ以上の意味がある。霜降り明星にコンビとしての勢いがあるのはもちろん、彼自身が若手でありながらトークの構成力と仕切りのセンスを持つ稀有な存在だと業界で評価されている証拠でもある。

 バラエティ界における世代交代が滞りがちな現状において、せいやの抜擢はその流れを変える可能性を秘めている。テレビの未来が閉塞的になりがちな今こそ、こうした若い才能をゴールデンの中心に据えることに意義があると言えるだろう。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。