スーパードライが手に入らない!? アサヒを襲ったサイバー攻撃で居酒屋に「異変」が
二日酔いさえ一気にさめそうなニュースである。飲料業界大手「アサヒグループホールディングス」がランサムウェア攻撃を受け、国内での受注・出荷に大ダメージを与えられている。目下、看板商品も品薄になりつつあるのだ。
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【写真を見る】「アサヒビール残り5本!」 居酒屋の風景にも“異変”が
「アサヒ残り5本になりました!」
システム障害が発生したのは9月29日。何が起こったのかというと、
「通常、例えばお客様が“スーパードライを5ケース欲しい”という場合、システム上でオーダーしていただきます。それが当社の受注センターに届き、出荷するというのが基本的な流れなのですが、そのシステム自体が停止している状況です」(アサヒグループの担当者)
窮余の一策として、
「応急措置的に発注書をFAXで送っていただいたり、電話注文をいただくなどの昔のやり方に戻しています」(同)
気の毒としか言いようがないが、酒飲みにしてみれば決して他人事ではない。
システム障害が発生して最初の週末、東京・新橋を訪れてみると、ある飲み屋の店主はこう言う。
「卸業者さんから“アサヒビール本社とサポートセンター、両方と連絡が取れない”と聞きました。うちは今あるスーパードライの在庫がはけ次第、サッポロビールに変更していきます」
また、別の飲み屋でスーパードライを注文すれば、
「貴重なアサヒですよ」
と大将が言い、
「アサヒ残り5本になりました!」
そう女将(おかみ)が念を押す。アサヒのエリア担当者が一軒一軒訪ねて回り、〈スーパードライは次の乾杯まで充電中!〉と書かれたポップを配布しているのだという。
身代金は数億~数十億円
かくも甚大なる危害を及ぼすランサムウェアとは、そもそも何なのか。
「“ランサム”とは身代金のこと。相手のシステムを破壊して暗号化し、お金を払えばそれを元に戻すための鍵を渡す、という手口がランサムウェアです」
そう解説するのは、ネットワークセキュリティーに詳しい神戸大学の森井昌克名誉教授である。
「攻撃を受けると、ディスプレイに“犯行声明”が表示されます。身代金の額は会社の規模によって異なりますが、大手の場合は数億~数十億円といったところでしょう。身代金のやりとりは仮想通貨で行われます。ただ、日本の大企業は基本的に身代金は払わない方向で動きます。金を払っても鍵が手に入らない場合がありますし、犯罪組織に金を払うことが企業イメージを損なうからです」(同)
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