フジテレビはこれで踏ん張れる? 菅田将暉、浜辺美波、神木隆之介… 主演級俳優てんこ盛りの「もしがく」は実際どうなのか
1984年の渋谷、昭和感も渋谷感も微妙な架空の色街「八分坂(はっぷんざか)横丁」で物語が展開していく。これはドラマというより舞台だ。地べたのゴザ席で膝を抱えて見る気分で挑む。三谷幸喜脚本、若手主演級俳優をこれでもかと集め、過積載気味の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」。混沌(こんとん)の出だしだ。
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主役で蜷川幸雄に憧れすぎている劇団演出家・久部(くべ)を演じるのは菅田将暉。難解な演出で評判は最悪、劇団員からは不平不満が噴出。たんか切って飛び出したものの、地味に傷ついている久部がたどり着いたのは八分坂横丁。案内所のおばば(やりすぎで楽しそうな菊地凛子)に紹介されたのは、妖艶な女・リカ(二階堂ふみ)がいるぼったくりバー。コワモテの用心棒・トニー安藤(まさかの市原隼人)が出てきて脅されるも、リカの助け舟で無傷で釈放される久部。
リカは隣接するストリップ劇場のダンサーでもある。この劇場、実は問題が山積み。客の入りが悪く、オーナー(シルビア・グラブ)はノーパンしゃぶしゃぶ店への業種変更をちらつかせる。支配人夫妻(野添義弘&言動がいちいちおかしい長野里美)は従業員をなんとか守りたいところだが、看板ダンサー・いざなぎダンカン(小池栄子)が照明係と駆け落ちして逃げてしまう。若手ダンサー・毛脛(けずね)モネ(秋元才加)は幼い息子(佐藤大空)の問題行動に悩んで、舞台に集中できず。唯一立てるのは古参ダンサー・みんなのパトラ姐さん(アンミカ)だが、満身創痍のお年頃で客受けも悪い。舞台監督兼下働きもこなす伴(野間口徹)が万能でも、元漫談家で今は客引きのうる爺(井上順)はイマイチ役に立たず、幕間芸人(西村瑞樹・大水洋介)の漫才も致命的につまらなくて、客に飽きられ商売上がったりだ。新人放送作家・蓬莱(神木隆之介)が人間関係潤滑油として暗躍しても、この劇場の未来は明るくはない……ゼエゼエ……登場人物が異様に多くて大変……。で、まだいるのよ、大物が。
劇場の近くにあるジャズ喫茶の、気の弱い従業員がひょうろく、渋いマスターが小林薫。八分坂派出所の生真面目な警官が戸塚純貴(コメディーに必須の巡査感)。色街を快く思っていないのが、八分神社の巫女(みこ)・樹里(浜辺美波)。その父で神主の論平(坂東彌十郎)は、こっそりストリップ劇場に行ってダンサーを熱烈に応援する太客でもあるのにね。
混沌の初回だったが、演出家として野望を抱く久部が瀕死のストリップ劇場を救うべく、理想の舞台を創造していく……のかな。大手企業のCM契約引っ提げた人気俳優もそろったことだし、ここで踏ん張れフジテレビ、といったところだ。
「客に尻を見せるな!」と路上ロックンローラーにけんか売ったり(昔はそう言われてたよね)、客そっちのけの演出論をぶちかましたりと、久々に暑苦しい菅田を中心に、どんな化学変化が起こるか楽しみではある。正直、熱狂というか執着するほどではないが、役者陣のおかげで微熱は続きそうだ。混沌の先に、懐古趣味以外の面白さがあるといいなぁ。









