業界内で「実力派」として知られた「ロングコートダディ」 4度目の決勝進出「キングオブコント」で優勝したワケ

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随所に笑い

 彼らが1本目に披露したのは、無邪気な少年と謎の生物「モグドン」の心の交流を描いた作品。2人は仲良くなるが、学校に行きたがるモグドンに対して、少年が彼を連れていけない意外な理由を告白するところで、大きな笑いが起こる。そして、その後はそれを軸にして話が展開していく。

 2人の会話をベースに進んでいくのだが、随所に笑いの仕掛けが散りばめられていて、見る者を釘付けにする。普通のおとなしそうな見た目の堂前に対して、兎は体が大きく、つかみどころのない不思議な雰囲気を持っている。このネタではそんな兎のキャラが見事に生かされていた。

 2本目のコントでは、キャリアウーマン風の女性が落ち込んでいる警察官の男性を励ますところから話が始まる。動きは少なく、ほぼ純粋な会話劇が展開されるのだが、そこで散発的に笑いを起こす。そして、最後には誰もが想像していなかったような劇的な展開が待ち受けている。

 静かなコントで爆発的な笑いを起こすロングコートダディは、相手の手を握るだけであっという間に投げ飛ばしてしまう武道の達人のようなファイトスタイルを持っている。優勝後の彼らと「情報7days ニュースキャスター」(TBS系)で共演した脚本家の三谷幸喜も「無駄な言葉が一個もないじゃないですか」と彼らのネタを絶賛していた。

 超絶技巧のネタ職人として業界内では知られていた彼らが、ついにメジャータイトルをつかんだ。ここからはますます活躍の幅を広げていくだろう。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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