フジテレビ得意の「本気の悪ふざけ」が復活? 「鬼レン歌謡祭」が大きな話題となったワケ

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大型コラボ特番

 10月5日に放送された「FNS鬼レンチャン歌謡祭」(フジテレビ系)が大きな話題を呼んでいる。人気バラエティ番組「千鳥の鬼レンチャン」と、フジテレビを代表する伝統的な音楽特番「FNS歌謡祭」を掛け合わせた、異色の大型コラボ特番だ。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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 番組のコンセプトは、「鬼レンチャン」の常連出演者と本物の一流アーティストが一堂に会し、千鳥・大悟の総合プロデュースのもとでパフォーマンスを披露するというもの。笑いと音楽の境界を軽やかに越えたこの番組は、いまのテレビ界では珍しい“バカバカしさ”と“本気”を同時に感じさせる貴重な存在である。

 この番組のベースになっているのは、「千鳥の鬼レンチャン」の「サビだけカラオケ」という企画だ。挑戦者が正確な音程で、10曲連続でサビだけを歌い切ることができれば、賞金100万円を獲得できるというもの。緊張感と笑いのバランスが絶妙で、多くの視聴者を惹きつけてきた。千鳥とかまいたちの2組がスタジオで挑戦者のVTRを見ながら、好き勝手にツッコミやボヤきを入れるのがこの番組の見どころだ。

 スタジオには基本的にこの4人しかおらず、余計なゲストもいない。芸人だけの閉じた空間だからこそ、彼らは好き勝手に放言することができる。誰にも気を遣わずに言いたい放題にすることで、結果的に笑いの純度が高い空間が生まれている。

 VTRの作り方にも細かな計算がある。ただのカラオケ企画の中に、千鳥とかまいたちのツッコミを誘発するような編集が施されている。つまり、番組そのものがツッコミを中心に成立しているのだ。出演者の中には、この番組をきっかけにキャラが立ったり、番組独自の芸名を与えられたりして、ブレークした人も多い。

「鬼レンチャン」は単なるバラエティではなく、芸人やタレントの発掘装置としての役割も果たしている。そこから派生して誕生したのが「FNS鬼レンチャン歌謡祭」であり、笑いの文法をそのまま音楽番組のフォーマットに移植している。

 ステージのセットや照明は「FNS歌謡祭」の格式と華やかさをしっかりと踏襲している。鮮やかな照明、堂々たるカメラワーク……見た目は完全に正統派の音楽番組だ。だが、そこに登場するのは、いつもの「鬼レンチャン」メンバー。彼らが真剣に、しかしどこかふざけたパフォーマンスを披露し、千鳥とかまいたちがツッコミを飛ばす。真面目な音楽と笑いのカオスが交錯する瞬間に、この番組の真価がある。出演者は歌唱力が高い一方で、衣装や演出がどこかおかしかったりする“ズレ”を抱えている。その絶妙な違和感がツッコミを引き出す。

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