「行列代行バイト」も出現? 当選倍率「100倍」の超難関パビリオンも…まもなく閉幕「大阪万博」予約争奪戦の熱狂
割り込み放題の西ゲート
万博のゲートは地下鉄中央線の夢洲駅が直結している東ゲートのほか、バスやタクシー、船でアクセスできる西ゲートが存在する。早朝、その西ゲートに向かうと、東ゲートとはまったく違う“秩序”が存在していた。
東ゲート前には3人~4人ずつの列ができていたのに対し、西は一列あたり十数人と横に長い。最前列付近には、アスリートや肉体労働者のような屈強な男性がちらほらいる。私のすぐ後ろに並んだ30代の常連女性は言う。
「早い人は午前3時にタクシーで西ゲート近くに乗り付けて、タクシー内で待機し始めるらしいです。サウジレストランの予約をするため、足の速い鍛えている男性が仲間に荷物を任せて走って、荷物を受け持った女性が後から入場するんやと聞いたことがあります」
当日予約のとれる施設の中でもっともハードルが高いのはパビリオンではなく、極上の料理を提供するサウジアラビアレストラン。この真のラスボスの制覇を彼らは目指しているらしい。
午前8時。警備員が拡声器で注意を呼びかけた。
「おはようございます。皆さん、これから移動していただきますが、注意していただきたいことがあります。後ろの方、絶対押さないように。押されて怪我をされても診療所は9時までは開きません」
列がゆっくり進み始める。すると殺伐とした雰囲気が列を包み込んだ。10数人いた列が7~8人にまで圧縮されるため、あちこちで割り込みが発生、そうはさせまいとする人との間で、ラグビーのスクラムを彷彿とさせる激しい押し合いや、サッカーのドリブル突破のような行為が頻発した。そんな中、屈強な男性とその仲間の女性たちからなる4人ほどのグループは不自然な行動を見せた。後ろから割り込まれないよう、全員が腕を組んで歩いていたのだ。驚いて凝視した私は、周りの参加者にたちまち隙を突かれ弾かれた。気がつけば、4~5列、後退していた。
“プロ”のランナー?
入場後、私は当日予約ができるラスボス=サウジアラビアのレストランへ向かった。西ゲートから約500メートル。入場開始からわずか4分後の8時54分に到着したとき、私の前には約50人がすでに並んでいた。一方、先ほど仲間と腕を組んで歩くという不自然な動きを見せていた屈強な男性はレストラン列の最前列付近に並んでいた。
後日、こんな話を聞いた。それは別の日にサウジレストランに入った男性の言葉だ。
「私より前に並んでいた鍛えている男性。彼はレストランの中に入っていませんでした。メンバーが全員、入れ替わっていました」
予約のために雇われた“プロ”のランナーなのだろうか。争奪戦もここまで加熱すると “危うさ”を感じるのは私だけなのだろうか。
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