「酷評」噴出の三谷幸喜ドラマ 豪華キャストで高額制作費…すでに撮影済みで“活路”はあるのか

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大半を撮り終えた

 八分坂の街を再現するオープンセットを千葉県茂原市につくったが、これも裏目に出ている面がある。ロケ部分がないから、どうしても映像に閉塞感がつきまとう。

「街をオープンセットで再現する意味が分からない。通常のセットとロケで出来る撮影なら、そうすればいいのではないか」(他局のプロデューサー)

 1時間ドラマの制作費は1回あたり平均約3000万円。それ以上使うと、利益を出すのが難しくなる。一方で、2500万円以下でつくってしまう低予算ドラマも稀にある。その場合、出演陣にはギャラの安いお笑い芸人らが起用され、セットなどもチープになる。「もしがく」はその真逆だ。

 小林薫(74)、市原隼人(38)、浜辺美波(25)、菊地凛子(44)ら一線級の出演陣ばかりが集められた。ギャラは高い。美術費も莫大であるはず。1回当たりの制作費は4000~5000万円はかかっているのではないか。配信など2次利用で回収する腹積もりだろう。

 もっとも、つまらなかったら配信での再生数も上がらない。フジとしては挽回したいだろうが、方向性の見直しは出来ない。もう大半を撮り終えているからだ。評価が自然と上向くのを待つしかない。

 三谷氏自身は動じていないのではないか。過去にフジ「古畑任三郎シリーズ」(1994年)、同「王様のレストラン」(1995年)など数々のドラマを当てたが、同「今夜、宇宙の片隅で」(1998年)のように平凡な結果に終わったドラマもあるからだ。いつも当たるわけではないことを知っている。

 監督・脚本を務めた映画「ギャラクシー街道」(2015年)も批判が目立ち、興行収入も低調だった。それでも三谷氏はどこ吹く風。たとえ「もしがく」がコケても三谷氏の名声は揺るがないだろう。

 8日からは同じ放送枠で日本テレビのサスペンス「ESCAPE それは誘拐のはずだった」(水曜午後10時)が始まる。桜田ひより(22)と佐野勇斗(27)のダブル主演作である。桜田演じる製薬会社の社長令嬢が、佐野扮する自動車整備工らに誘拐される。ところが、なぜか2人は手を組み、日本中が注目する逃亡劇を始める。

 視聴率は基本的に相対的なものだから、「ESCAPE」が伸びると「もしがく」は苦しくなる。その逆もある。どちらのドラマも相手の仕上がり具合が気になるだろう。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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