人生が思い通りにならないことを悟った「30歳」 だからこそ夢を追いかける4人組に背中を押される「いつか、無重力の宙で」
学生時代に仲の良かった友人と疎遠になることは多い。というかほとんどは縁が切れる。偶然再会したとしても違う星の人になっていて、心の距離は縮まらなかったりもするのよね。
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もし、十数年ぶりに会った元仲良しに、人工衛星の企画書を渡されて一緒に作ろうと言われたら? 私だったら速攻断るが、このドラマに出てくる女性たちは宇宙が好きという共通項がある。青春を宇宙に捧げていた天文部の仲良し4人組が疎遠になり、紆余曲折の13年を経て再結集。夢の実現に奔走するのが、「いつか、無重力の宙(そら)で」。現在30歳という設定が丁度ええ。友人とつるむ体力と柔軟性と余白がまだあるしねぇ。
主人公・望月飛鳥(木竜麻生/高校時代は田牧そら)は広告代理店勤務。あれだけ宇宙に夢中だったが、今は多忙&疲弊。上司(行澤孝)に押し付けられた仕事も、やや問題のあった後輩(佐藤優太)の面倒も、飲み会の幹事までも安請け合いしてしまう性格で、自己嫌悪に陥る日々(飛鳥の心の声は柄本佑が代弁する)。
そんな飛鳥の前に現れたのは、同じ天文部で高3の夏に突如姿を消した日比野ひかり(森田望智/上坂樹里)だった。姿を消した理由はがんを患ったから。これは治癒し、その後宇宙飛行士を目指してJAXAに入ったものの、二次がんを発症し、夢を断念したという。情報量が膨大で衝撃的な再会……。飛鳥はひかりのために、人工衛星を作るという無謀な計画を立て、天文部の他の二人を探す。
水原周(あまね・片山友希/白倉碧空)は営業職、結婚を考える相手もいて、人工衛星どころじゃない。もう一人、市役所勤務の木内晴子(伊藤万理華/山下桐里)はシングルマザーで、仕事と育児で手一杯。人工衛星を作るには知識も資金(概算1000万)も必要。が、ひかりの事情と苦悩が分かり、わだかまりが解けた四人は実現に向けて動き出す。
SNSでPRしてクラウドファンディングで資金を集めるとか、甘過ぎて「絶対無理」と思ったが、四人のチームワークと情熱に可能性を感じるようになった。打ち上げるのではなく、JAXAに頼んで納豆パックサイズの人工衛星を宇宙で放出してもらう(実際にJAXAのHPで事例が紹介されていて納得)っつう説明で腑に落ちた。そもそもひかりは元JAXAだしな。
はたから見れば「30歳で青春ごっこ」かもしれないが、人生が決して思い通りにならないことを悟った30歳が、友人とはるかなる目標に挑むって、貴重な体験だなぁと。
四人が集まるファミレスでバイトしているのが宇宙工学を学ぶ大学生・金澤彗(奥平大兼)。宇宙をキャッキャ語る四人を疎ましく思っているが、協力してくれそうな気配。彗の大学の准教授・和泉季子(鈴木杏)も頼もしい味方だ。話しかけてくるタイプのタクシー運転手の舎人(とねり)五郎(生瀬勝久)もすっかり外部応援団に。
13年の空白が一気に埋まった四人。悲しい別離の予感もあるが、友情は今後一生盤石。非営利的共同作業の尊さと有益性を改めて感じさせる作品だと思う。








