「いっそマリノスを手放してくれたほうが良かった」 「横浜M身売り」否定の日産にサポーターの本音 強化は提携先任せ、有力OBも遠ざけ…「ここ数年、チームは“死に体”となっていた」

スポーツ

  • ブックマーク

提携も解消

 これと軌を一にするように、OBとの関係も冷え込んだ。Jリーグ発足以降もマリノスは、井原正巳、川口能活、松田直樹、中澤佑二、中村俊輔ら日本代表のスター選手を輩出したが、

「とりわけCFGと提携した後は、彼らと縁が薄くなった。あの中村俊輔でさえ、提携後にCFGの意向で切られてしまったのが象徴的です。それまでは、木村、水沼両氏などOB監督も生まれていましたが、そうした伝統もなくなってしまった」(同)

 実際、CFGとの提携後、マリノスの監督はほとんど外国人である。そうした点もあってか、前述のような有力なOBが多数いても、チームの危機に立ち上がろうという人は少ない。

「クラブと絶縁状態になっているOBもいるほどです。あるOBに今回の身売り騒動について聞いたら、“ボロボロの運営をしてきたクラブが悪い”と痛烈に批判をしていたのには驚きました。こうした状況では、ファンもチームに愛着を持ちにくい」(同)

 いまなお、外国人監督と並行して、OBが監督に就任する鹿島アントラーズとは対照的である。

「実際に、日産内部で“一部売却”ではなく、“身売り”が検討されていたことは間違いありません」

 とは、前出のマリノス関係者。

「買い手企業も3社ほどに絞られている段階でした。方針が急転換されたのは、報道が先行して話が壊れてしまったか、あるいは、金額その他の条件で折り合いが付かなかったのか……。また、地元の横浜市から売却に反対の声が上がったことの影響もあるでしょう。1998年、マリノスは、スポンサーが撤退した横浜フリューゲルスを吸収合併した過去がある。それを密室で行ってしまったため、フリューゲルスサポーターは激怒し、マリノスにも批判の矛先が向いた。その時の苦い記憶もあり、“身売り”から“一部売却”へと方針を変えたのではないか」

雰囲気が悪い

 先に述べたように、クラブの筆頭株主であり続けるにしても、日産は経営危機のただ中にある。マリノスへの十分な支援は難しい。まして、これも先に述べたように、クラブは現在、降格の危機にある。

「残留争いをしている中での身売り騒動ですから、チームの雰囲気は悪い。フロントも選手たちも浮足立っていて、ゲームに集中できていません。守りを固めてロングパスを前線に送るという、単純なパターンの作戦に終始している。今季は残り5試合ですが、相手は優勝争いに加わる上位チームばかり。降格の可能性が高い」(同)

 間の悪いことに、Jリーグは、現在の春秋制(2月~12月)から、秋春制(8月~5月)に移行するため、次のシーズンは「特別大会」となり、3月開幕、5月閉幕の開催でJ1とJ2の入れ替えは行わず、8月開幕、5月閉幕の来々期に突入する。つまり、今季J2に落ちれば、一年半は昇格のチャンスがないのだ。

「現状、マリノスには日本代表選手もいませんし、これでJ2に落ちれば、有力選手はさらに流出していくでしょう。クラブの人気も落ちる。今は黒字のマリノスですが、経営が悪化していくことは確実」(同)

 その際、ただでさえ経営難である日産が、クラブにどれだけの支援が出来るというのだろうか。ちなみに、先のCFGとも、この6月でパートナーシップ提携を解消している。

また、株を一部売却するにしても、J2に落ちれば、一気にチームの価値は下がる。一昨年、鹿島アントラーズの親会社で約6割の株を保有していた日本製鉄が、チームの株を約16億円でメルカリに売却したが、

「マリノスの株はそれよりずっと安くなるでしょう。それ以前に買い手が付くかどうか……」(同)

「いっそのこと、日産が手放してくれたほうが良かった…」

 サポーターの嘆きが実に説得力を持って聞こえてくるのである。

小田義天(おだ・ぎてん) スポーツライター

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。