「いっそマリノスを手放してくれたほうが良かった」 「横浜M身売り」否定の日産にサポーターの本音 強化は提携先任せ、有力OBも遠ざけ…「ここ数年、チームは“死に体”となっていた」

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 サッカーJリーグ屈指の名門、横浜F・マリノスが揺れている。先週来、親会社・日産自動車が、クラブの身売りを検討しているとの報道が相次ぐ中、10月3日、当の日産が声明を発表。「今後もマリノスの筆頭株主であり続ける」と身売りを否定する一方で、保有する株の一部売却を示唆したのだ。マリノスと言えば、1993年発足時からJリーグに加盟する「オリジナル10」のひとつで、リーグ制覇5度、30年以上にわたり、1度もJ2に降格していない日本サッカー界を代表するクラブだ。しかし、現在、チームは17位とJ2降格の危機に沈み、それに加えて今回の身売り騒動。一体、何が起こっているのか。

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6700億円の赤字

 マリノスの身売り騒動は、言うまでもなく、日産自動車の経営悪化が原因だ。世界的な販売不振により、日産は昨年度の決算で過去最大規模の6708億円の赤字を計上。今年度の第一四半期の決算でも1158億円の赤字となっている。イバン・エスピノーサ社長は経営再建を進め、その中には、2万人の人員削減や、追浜工場の閉鎖や本社ビルの売却案なども含まれている。“痛み”を伴う計画だけに、サッカークラブの運営に、従前のように注力している状況ではないのかもしれない。

 そんな中、先週になって、日産自動車が、保有するマリノスの株約75%の売却を検討しているとの報道が相次いだ。売却先についても、同じ横浜市に本社を構える大手家電量販店「ノジマ」の名が報じられた。マリノスの中山明宏社長が報道を明確に否定しなかったこともあり、身売りは既定路線――そう見られていたところ、10月3日になって、突如、日産が声明を発表。今後も「筆頭株主であり続ける」として「身売り」を否定し、合わせて「株主構成の強化について積極的に検討」と、株の一部売却を示唆したのだ。

 これを受けて、マリノスサポーターからは安堵の声が上がると思ったが、意外にもコアなファンに聞くと、

「むしろ日産が手放してくれたほうがありがたかった」
「日産が親会社のままでは強くなれない。今からでも手放してほしい」
「自分たちはマリノスファンであって日産ファンではない」

 と落胆の声しきりなのである。

コーチが突如辞任

 2022年はリーグ優勝、2023年は2位と好成績を収めながらも、ここ数年、マリノスの内情は“死に体”といってもいい状況が続いていた。

「本社、球団、スタッフ、選手の一体感が薄れていた。みなが向いている方向がバラバラで、サッカーへの熱量は下がっていた」(マリノス関係者)

 それが昨季以降の成績にダイレクトに反映している。昨季は9位、今季に至っては17位(第33節終了時点)と低迷。降格圏は18位以下であり、危機が現実味を帯びている。

「今年だけで監督が2人解任され、既に3人目です。この夏には、昨年まで2年連続で得点王に輝いていたFW、アンデルソン・ロペスら3名のブラジル人選手を放出した。もともと彼らはチームの方針に不満を抱いていましたし、高額年俸もネックになったと見られていますが、主力が放出されては、チーム状態は上向きません。こうした状況に責任を感じたのか、OBで元日本代表のGK、松永成立氏が、20年近く務めていたコーチを突如辞任するという異例の事態も起きました。スポンサー獲得も難航し、営業が苦労しています」(同)

 フロントもガタガタだった。

「昨年は、シーズン中にもかかわらず、中山社長が浦和レッズの強化担当者だった西野努氏をSD(スポーティングダイレクター)に据えるべく引き抜いた。これにこれまでの強化スタッフが猛反発し、退職した者も出たほど。その西野氏も昨オフにはブラジル人選手を切ろうと画策し、対立を招きましたし、彼が連れてきた監督はことごとく失敗した。そんな騒動ばかりで、あるスタッフは“(任期途中での退任が多く)違約金を最も支払っているクラブではないか”と嘆いていたほど」(同)

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