防衛省が「防弾ランドクルーザー」導入を検討…世界中の正規軍、特殊部隊、平和活動で高く評価された“知られざる歴史”

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 第1回【ウクライナ戦線でトヨタ「ランドクルーザー」が脚光を浴びる意外な理由 物資の限られた戦場では「戦車より使い勝手がいい」と評価されることも】からの続き──。トヨタのランドクルーザーが故障せず、燃費もよく、悪路を苦にしないことは世界中の人々が知っている。そのため国連の主要機関もランドクルーザーの使用を推奨するほどだ。(全2回の第2回)

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 アフリカのチャドでは70年代後半から内戦が続いていたが、80年代に入ると政府軍も反政府軍もトヨタのランドクルーザーを軍用車として使って戦闘を行った。これに注目した欧米のメディアは1986年、チャド紛争を“トヨタ戦争”と大きく報じた。

 その後、世界各国の正規軍や特殊部隊がランドクルーザーを採用した。さらに同じ理由からテロリストも重用した。イスラム国やアルカーイダの映像には必ずと言っていいほどランドクルーザーが映し出された。

 だが劣悪な環境に悩まされるのは軍隊やテロリストだけではない。生活水準が劣悪な地域では国連が食料や医薬品を援助しているが、そうした活動にもランドクルーザーは欠かせないのだ。

「WHO(世界保健機関)は2021年、ワクチンを運ぶ保冷車にはランドクルーザーが適していると“太鼓判”を押して話題になりました。確かに道路が整備されていない地域でもランドクルーザーなら走り抜けることが可能です。故障とは無縁なのでエンジンが止まり、ワクチン用の冷蔵庫の電源が切れるというアクシデントも極めて少ないでしょう。トヨタは公式サイトでランドクルーザー70を『どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ』と形容していますが、まさしくその通りです」(同・軍事ジャーナリスト)

難航した後継車選び

 こうした事実を日本の防衛省や自衛隊も把握しており、新型の装甲車にはランドクルーザーが候補の一つに上がっているという。

 NHK NEWS WEBは9月27日、「自衛隊装甲車の後継に民生用車両を検討 防衛省」との記事を配信した。

 記事は《防衛省が初めて民生用の車両を防弾化して導入することを検討している》と報じた上で、以下のように伝えた。

《来年度、試験用の車両を調達し2028年度に性能試験を行う方針で、トヨタ自動車の「ランドクルーザー」2車種と、いすゞ自動車の「DーMAX」の計3車種を数台ずつ調達することを検討しているということです》

 軍事ジャーナリストは「これまで自衛隊は小松製作所(コマツ)が製造した軽装甲機動車を使用していました」と言う。

「略称はLAV(Light Armoured Vehicle)で、2000年代から使用が始まりました。ところがコマツが軍事産業から撤退することになり、後継車を決める必要が生じたのです。防衛省はオーストラリア軍かスイス軍の小型装甲車を選定しようとしたのですが、価格が高いというのがネックだったようです。そのためランドクルーザーとD-MAXを使う案が浮上したのですが、私はこの決断を高く評価すべきだと考えています」

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