後輩を「呼び捨て」は論外、固定電話が鳴ったら先輩社員が取る…ベテランが若手の顔色をうかがう時代が到来した“当然すぎる理由”

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氷河期世代のベテランがAI使いの達人になることも

 一体何を具体的に忖度しているのかといえば、遅刻を咎めず、急な有給取得依頼も快く受け入れ、固定電話にかかった電話に出るのはベテランの仕事、となっているのだという。
また、ベテラン社員の経験値よりも、AIをはじめ新たなシステムに迅速に対応する能力ほか、若手の順応性やデジタル技術へのアレルギーのなさのほうが価値を持つ時代になっている面もある。そうなると、電話番、得意先の接待といったアナログ部分についてはベテランの役割になってもおかしくはない。

 ただ、AIの使いこなし術については、ある程度勉強すれば現状の使い方でかなり効率的に作業をすることができるうえに、AIが次々と進化するものだから「若者の専売特許」と思う必要はない。というのも、実はベテランの方がAIの使いこなしができる例もあるという記事を読んだ。

 氷河期世代にSEになった人など、若手時代、上司が「働かないおじさん」が多かったこともあり、激務に慣れている。現在は若者にAI作業をやらせようとしても、「これ以上は勤務時間外です」などと言い、ブラック労働に慣れていない。そのため、氷河期世代のベテランがAI使いの達人になってしまう職場もあるのだという。そもそも、AIを使うには、自分の頭の中の知識も案外必要である。たとえば、企業のV字回復についてクライアントに提示するにはAIにこんな投げかけをする必要がある。

「カルロス・ゴーン氏が主導した日産自動車のリバイバルプランの成功例と失敗例を、現在の日産自動車の復活プランに当てはめ、それをEVやハイブリッド時代、さらにはトランプ関税時代の今、想定できる成功と失敗を考えてください」

 案外過去の知識と、ネット上の知識とを繋げるのは自分の頭なので、ベテランの経験もムダではない。
そうはいっても、若者を以前よりも大事にし、腫れ物に触る扱いは顕著だ。そのため、当然ながら相手に対して「おーい、山田ぁ!」と呼ぶのはナシで、「すいません、山田さ~ん」といった「さん」づけを徹底するようになった。

 もちろん年齢・キャリアに関係なく敬語で喋る、敬称をつけるのは社会人として当たり前のことではあるが、困るのがこれまで長年呼び捨てを続けてきた社員同士だ。

若者は国の宝

「おい、田中、なんか社長命令で『誰にでもさんづけをしろ』と来たけどいきなりお前のことを『田中さん』と呼ぶことになるんか?」

「う~ん、まぁ、そういうことなんじゃないですかねぇ。ただ、僕はずっと『おい、田中』とこの10年以上呼ばれ続けてきたからいきなり『田中さん』と呼ばれてもなんかよそよそしく感じてしまうんですよね」

「オレもそうなんだけど、社長命令だからしょうがないよな。まぁ、こうやって古くからのメンバーで飲む時は昔ながらの空気感でやっていこう」

 日本語という言語の難しい部分が噴出した形(まぁ、大問題ではないが)で、ベテラン社員はかつての「上を向く」ではなく「下を向く」に方向を変えた程度とも言えなくない。

 そうした状況下、株式会社おくりバントは、8月1日に退職引き止めサービス「イテクレヤ」を正式リリース。サービスの流れは経営者または人事責任者への想定できる退職理由等のヒアリングを行うのが第一ステップ。その後、退職希望者を含む複数社員に匿名インタビューを行い、不満や要望を聞く。

 そこから経営層へフィードバック報告をし、改善策提案からの改善案の実施・運用設計を行う。最終ステップは、経営者から退職希望者に改善策を提示。その際は、イテクレヤの担当者も同席するという。

 退職代行サービスが話題になったが、引き留めビジネスも社外の第三者が関与する時代になったのだ。かつて「子どもは国の宝」と言われたが、ついに2024年の出生数は68万人台となった。こうなると、子どもの数は足りず、そこに加えて「若者は国の宝」ということで、より若者を大事にするというか忖度して顔色をうかがう社会風潮になるのかもしれない。ちなみに私はアメリカ人の3.9年に近い4年で24年前に会社を辞めている。

ネットニュース編集者・中川淳一郎

デイリー新潮編集部

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