店長の年収を「2000万円」に!? 丸亀製麺が“大盤振る舞い”するワケ

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年収は4倍近くに

 10月1日から最低賃金の引き上げが全国で順次行われる。ところが、それを待たずに大盤振る舞いの報酬を明らかにしたのが、外食大手のトリドールホールディングス(以下トリドール)である。9月17日、傘下の「丸亀製麺」の店長の年収を最大2000万円にすると発表したのだ。

 同社によると、現在の店長の最高年収は約520万円。これを4倍近くにするわけで、そのため、新たに「ハピカンオフィサー制度」なるものを作ったという。ちなみにハピカンとは「ハピネス(幸福)」と「カンドウ(感動)」を合わせた同社の造語である。それで年収2000万円とは、どんなカラクリなのか。

「ハピカンオフィサーは、『従業員の内発的動機を引き出し、感動体験を生み出すリーダー』へと役割が進化します。煩雑な事務業務は他メンバーに分担し、より従業員に向き合い、業績につなげることが役割となりますので、新たな報酬体系を構築いたしました」(広報担当者)

 感動体験を生み出す? 事務作業はしない? 何だか狐につままれたような話だが、同社によると最高位は「グレートハピカンキャプテン」。今後3年で10名を育成する予定というから、うまくすれば年収2000万円の店長が10名出てくることになる。

新たな人材獲得を見据えて

 流通アナリストの中井彰人氏によると、

「これまでチェーン店のマネージャーの評価は業績連動が一般的でした。しかし、店のトップが売り上げを気にするあまり、現場にプレッシャーをかけてブラック職場が生まれがちです。丸亀製麺は、これを見直して、顧客満足度(CS)や従業員満足度(ES)を取り入れた新評価基準を作ったのでしょう。もちろん、それを達成すれば業績にもつながると検証した上でのことです」

 さらには、新たな人材獲得も見据えているとフードサービスジャーナリストの千葉哲幸氏が言う。

「外食産業もそうですが、就職してひと通り働くと、将来のポジションが見えてくるものです。もちろん収入の限界も。そこにトリドールは新たなキャリア制度を示した。社外からも人材を呼び込みたいのでしょう。例えば、一人で数店舗をまとめられるエリアマネージャーのような人物を育てれば高い報酬を出せる。また、同社の決算説明資料によれば、今期は国内100店舗、海外100店舗出店するとあります。優秀な人材ならいくらでも欲しいはずです」

 目指しているのは「外食のユニクロ」なのか。

週刊新潮 2025年10月2日号掲載

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