デビュー作で「帰っていい」 映画「雨あがる」が転機…還暦ビキニにYouTube 66歳・宮崎美子の人生観

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アニメ映画「ホウセンカ」

 俳優・宮崎美子(66)は、還暦を過ぎてもなお新しい挑戦を続ける存在だ。アニメ映画「ホウセンカ」(10月10日公開、監督・木下麦)で声優として注目を集める一方、その半生を振り返れば、仕事に対する揺るぎない姿勢と、人生を静かに見つめる眼差しが浮かび上がる。(全2回の第2回)

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「私は家族もいないので、自分の命を大事にして、誰にも迷惑をかけず静かに人生を閉じられたらいい」

 華やかな芸能界で45年ものキャリアを重ねながらも、宮崎の人生観はきわめて現実的だ。

「ホウセンカ」は刑務所に収監され、死期を悟った主人公・阿久津(小林薫)が人生最後の逆転を夢見る物語。宮崎はかつての恋人で年老いた那奈を演じているが、自身は日々の暮らしの中で小さな幸せを積み重ねることに価値を見出している。「小さな逆転こそが幸せだと思う。健康で元気に、平穏に生きていけることが一番大切」と話す。

 宮崎は1980年にデビュー。当初は決して順風満帆ではなかった。「最初に主演したドラマ『元気です!』(1980年)では、いい芝居をできなくて本当に悔しい思いをしました。プロデューサーから『終わったら、(熊本に)帰っていい』と言われたこともあります」。そのとき、共演した河内桃子さんに「もう少しおやりになってみれば」と声をかけられた。

 その言葉に励まされ、再び踏みとどまったことが、その後の道を決定づけたという。

「続けることで少しずつ見えてくるものがあって、それが面白かったんです。辞めようと思ったことは一度もない。続けてきてよかった、と心から思います」。

 大きな転機となったのは、2000年公開の映画「雨あがる」だった。黒澤明の遺志を継いだ作品で、翌年には日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した。「ようやくこの仕事をしていいんだと思えました。デビューから20年、初めて入り口に立てた気がしたんです」。苦悩や試行錯誤を経て、俳優としての確信を持てた瞬間だった。

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