コメ問題を足掛かりに総裁選に挑む「小泉進次郎農水大臣」の通信簿…イメージ先行で実績に乏しい“小泉農政”の真相とは

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農水省で増えた「クソどうでもいい仕事」

「ブルシット・ジョブ」という概念がある。これは「クソどうでもいい仕事」と訳される。その提唱者である文化人類学者のデヴィッド・グレーバーは、次のように定義した。

「被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態」

 備蓄米の放出に関して農水省がやったことの中には、少なからぬ「クソどうでもいい仕事」が含まれていた。

 今、省内では乾田直播(かんでんちょくは)という技術が空前のブームだ。手間のかかる田植えをせず、種籾(もみ)を田んぼに直接まく。その流行も、小泉大臣の“鶴の一声”に始まっている。乾田直播がコメづくりの効率化につながるのは、間違いない。しかし、これは国内で導入されて数十年が経過した昔からある技術で、雑草が繁茂しやすく収量が下がりやすい欠点を持つ。救世主のように扱うと、危うい。

 小泉氏は、職員を振り回せるほどリーダーシップがあるとも言える。それだけに、大臣職から降りた後に、コメ業界や省内の混乱をどう収束させるのか。総裁選を控えてそんなことを考える余裕はないだろうが、祭りの後に向き合ってほしいものだ。

山口亮子(やまぐちりょうこ)
ジャーナリスト。愛媛県生まれ。京都大学文学部卒。中国・北京大学修士課程(歴史学)修了。時事通信記者を経てフリーに。著書に『日本一の農業県はどこか 農業の通信簿』(新潮新書)、『ウンコノミクス』(集英社インターナショナル)、『農業ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)、共著に『誰が農業を殺すのか』などがある。雑誌や広告の企画編集やコンサルティングなどを手がける株式会社ウロ代表取締役。9月18日に『コメ壊滅』(新潮新書)が刊行された。

デイリー新潮編集部

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