コメ問題を足掛かりに総裁選に挑む「小泉進次郎農水大臣」の通信簿…イメージ先行で実績に乏しい“小泉農政”の真相とは
「やった感」の割に乏しい実績
小泉大臣の主な政策を、通知表をまねて評価してみる。
政策:随意契約による備蓄米の放出
評価:よくできました
影響:供給量が増え、当座の不足感は解消。価格の押し下げ効果は限定的
政策:5キロの米価を3,000円台に
評価:もう少しがんばりましょう
影響:6月に実現するも、9月には再び4,000円台に
政策:作況指数の廃止
評価:もう少しがんばりましょう
影響:廃止で指標がなくなり、現場が混乱中。新たな指標を出すことに
政策:減反廃止
評価:もう少しがんばりましょう
影響:コメの新政策を議論する自民党の「農業構造転換推進委員会」トップに江藤拓前大臣が就くなど、揺り戻しの気配
見ての通り、備蓄米の放出を別として、注目された割に実績を残せていない。
最大の功績である備蓄米の放出にしても、疑問符が付く。5月下旬に表明し、同月末にオンラインや店頭での販売が開始。初速は早かった。しかし、既存のルートに乗らない大量の備蓄米の流通は、すぐ行き詰まる。8月にようやく店頭に並べたスーパーもあり、もともと8月に設定していた販売期限を延長してきた。見込みの甘さは、明らかだった。
農政局の職員がスーパーを飛び回って
「今、農政局の皆さんにもご協力をいただいて、全国での店頭の価格を、まさに皆さん走り回って、店頭で調べて発表させていただいている……」
2025年6月10日の小泉大臣の記者会見で飛び出したこの一言に、度肝を抜かれた。農政局は、農水省の地方にある支局に当たる。その職員をスーパーの店頭価格を把握させるために走り回らせているという。人手が余っている訳でもないのに、こんなアナログな人海戦術をするとは――。
小泉大臣は、それを自信にあふれた様子で言うので、驚いてしまった。随意契約で備蓄米を扱うスーパーが、POSデータの対象ではないからだという。
それにしても、農政局の職員が高給をもらって、スーパーの店頭で価格を調べている。これは壮大な無駄ではないだろうか。私の知るコメの業界誌は、店頭価格の調査記事を作るときは、アルバイトに頼んでいた。
農水省の迷走は、これだけに留まらない。
備蓄米の大量放出に伴い、小泉大臣は省内に「米対策集中対応チーム」を5月26日に発足させた。本省の職員40人に、農政局も合わせて総勢500人という規模だ。その発足式のようすは、ニュースで報じられた。彼らは、備蓄米の売渡しやコメ流通の円滑化に当たるとされた。
発足から間もなく、備蓄米について同省に問い合わせたことがある。期せずして担当職員にすぐ電話がつながったのは、チームの人員が多いからかもしれない。ただ、こちらが質問を伝えても、回答が要領を得なかった。最後には「すみません、備蓄米についてあまり分かっていないもので……」と謝られた。にわかに人員をかき集めたのだから、仕方がない。
「農水のチームは大変だったと思う。大臣が言ったことをすぐ形にしないといけなかったから」
事情通はこう話す。農水省の仕事は、小泉大臣のぶち上げた政策により、玉突き事故のように次々と増えていった。突貫工事や人海戦術で取り組む仕事に意味があれば、まだ救いがある。ところが、そうではないものも見受けられる。
[2/3ページ]



