プロ野球で起きた不思議な“偶然の一致” 「ダブル吉見の先発対決」「アルカンタラ同士で対決」そして「坂本勇人に代打・坂本勇人」

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思わぬところで頭を使わせられる

 同一チームの同姓同名選手で、ポジションまで同じ投手。登録名をどうするかで球団が頭を悩ませたのは、1982年の阪神だ。

 前年の1981年、近鉄の右腕・佐藤文男が金銭トレードで阪神に移籍したのが、そもそもの始まりだった。同年、佐藤はリリーフで3試合に登板した。

 そして、翌82年、印旛高のセンバツ準優勝右腕・佐藤文男がドラフト外で入団してきたことにより、同一チームに同姓同名の投手2人が存在することになった。

「思わぬところで頭を使わせられる」と困惑した球団側は、「佐藤A」と「佐藤B]、「佐藤新」と「佐藤旧」など、珍案百出ともいうべき状況のなか、一番しっくりきそうな登録名を模索した。

 最終的に先輩が「佐藤文」、後輩が「佐藤男」と「文男」の2文字を仲良く分ける形で落着。佐藤文は「一時はどうなるのか不安だったけど、ま、妥当なところだな」(週刊ベースボール1982年2月22日号)と安堵の表情を浮かべた。

 その後、佐藤文は同年限りで退団し、佐藤男が「佐藤」になったが、こちらも1984年にロッテに移籍している。

 同様の例では、1986年から89年にかけて、日本ハムに投手、内野手に2人の田中幸雄が在籍したため、投手は「田中幸」、内野手は「田中雄」とこれまた名前を2つに分けて表記された。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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