プロ野球で起きた不思議な“偶然の一致” 「ダブル吉見の先発対決」「アルカンタラ同士で対決」そして「坂本勇人に代打・坂本勇人」
8月30日に甲子園球場で阪神・高崎遥人、神宮球場で広島・高橋昂也、横浜スタジアムで中日・高橋宏斗と、セ・リーグの試合が行われた3球場すべてで高橋姓の投手が先発し、ネット上で「セ・リーグは高橋に乗っ取られたかよ」といった声が上がる珍事となった。さらに9月11日の阪神対DeNAでは、熊本・濟々黌高出身の大竹耕太郎、静岡・静清高出身の石田裕太郎の“せいせい同士”先発対決も実現した。過去にもあった不思議な偶然の一致を振り返ってみよう。【久保田龍雄/ライター】
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どっちも吉見か
両チームともに吉見姓の投手が先発したのが、2009年7月18日に横浜スタジアムで行われた横浜対中日だ。
中日は吉見一起、横浜は吉見祐治が先発し、“吉見対決”が初めて実現。場内アナウンスで両チームの先発バッテリーが発表されると、スタンドから「どっちも吉見か」というざわめきが起きた。
中日・吉見は、開幕以来2試合横浜戦に先発し、いずれも完封勝ちという“横浜キラー”。この日はハーラーダービートップタイの10勝目がかかっていたが、立ち上がりからリズムに乗れず、初回に藤田一也、内川聖一の連打で1死一、二塁のピンチを招いてしまう。
だが、捕手・谷繁元信がマウンドに向かい、「先に点を取られてもいいから。すぐに追いつくから」と励まし、もっと広くゾーンを使うよう要求すると、余計な力が抜け、村田修一を中飛、佐伯貴弘を二ゴロに打ち取った。2回以降も、走者を出しながらも要所を締め、スコアボードにゼロを並べていく。
一方、6歳年長の横浜・吉井も、2回にブランコに先制ソロを浴びたものの、6回を1失点とほぼ互角に投げ合った。
3回表裏には、打者・吉見と投手・吉見の対決も交互に実現し、どちらも中前安打を記録するなど、投打にわたってファンを楽しませる展開となった。
だが、横浜・吉井は0対1の7回、無死一、三塁のピンチで、藤井淳志の遊ゴロの間に2点目を献上し、次打者・中村一生にも四球を与えたところで降板した。「粘り切れず、すみませんでした」と悔やんだ。
これに対し、「調子は良くなかった。やばいな、やばいなと思いながら投げていた」という中日・吉見は、9回を7安打6奪三振無四球で横浜に対し3試合連続完封でシーズン10勝目を挙げた。シーズン4度目の完封中、無四球試合は3度目と“ミスター・コントロール”ぶりを発揮した。
翌19日付の毎日新聞は「ヨシミが笑い ヨシミが泣いた」とという見出しで報じている。
大先輩の前で存在をアピール
1999年5月9日の西武対ダイエーでは、5月2日以来2度目の星野智樹、星野順治の“星野同士対決”が実現したが、この日はオリックス・星野伸之もロッテ戦で先発し、パ・リーグの3人の星野が先発揃い踏みとなった。
投手も打者もアルカンタラという珍対決が実現したのが、2022年6月5日の阪神対日本ハムだ。
阪神が4対3とリードした7回、先発の伊藤将司に代わり、2番手のラウル・アルカンタラがマウンドに上がった。
一方、日本ハムの先頭打者も、5回にチーム初安打を放った6番打者のアリスメンディ・アルカンタラだった。
アルカンタラ同士の対決という珍しい出来事に、スタンドはどよめき、ツイッターでも「アルカンタラ」がトレンド入りした。
対決の結果は、カウント1-2から137キロスプリットで二ゴロに打ち取り、投手に軍配が上がった。
ツイッター上では「アルカンタラ対アルカンタラは、アルカンタラの勝ちか」「負けたのはアルカンタラか」などの声が出た。
この回を3者凡退に切って取り、12ホールド目を挙げた阪神のアルカンタラだったが、シーズン後、李承燁監督の韓国・斗山ベアーズへの3年ぶり復帰が決まり、同姓対決もこの日の1打席で見納めとなった。
3軍戦で、坂本勇人の代打に同姓同名の坂本勇人が告げられる史上初の珍事が見られたのが、2022年5月25日に行われたプロ・アマ交流戦の巨人対ティ・エステックだ。
右膝故障で3軍調整中の背番号6・坂本はこの日、DHで25日ぶりの実戦に出場。2打席凡退した後、5回の3打席目に代打を送られたが、その代打が、なんと、同姓同名の2年目捕手・坂本勇人だった。この珍交代劇の“仕掛け人”は、駒田徳広3軍監督だった。
同姓同名でも、登録名は「坂本」「坂本勇」と区別されているため、「バッター・坂本に代わりまして坂本勇人」の場内アナウンスが流れるなか、背番号006の「坂本勇」は見事中前にタイムリーを放ち、大先輩の前で存在をアピールした。
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