最愛の夫の「死」とどう向き合ったのか 倉田真由美、LINEや電話番号は生かしたまま…今も音楽は「泣かずに聞けない」

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「時間」が関係

 この1年半の間は、夫のアルバムや動画を暗記するほど見てきました。全部見尽くすのが怖くて、まだ少しだけ残しているものもありますが、それは「いつか私が死にそうになったら見よう」と思っています。

 私のように何度も思い出したいという人は、動画や写真、音声をできる限り残しておいたほうがいいと思います。悲しくて写真などを全く見られなくなる人もいるようですが、私は「死ぬほど見る」ことで悲しみと向き合うタイプです。

 実は、夫が亡くなってしばらく経った頃、夫について描いた漫画の続きを描こうとしたことがありました。でも、夫が蘇りすぎてしまって、辛くて描けなかったんです。セリフを書いて夫を動かすということが、当時の私にはどうしてもできませんでした。

 亡くなって1年半が経った今になって、ようやく描けるようになり、今回の書籍の中で描いています。これも、やはり「時間」が関係しているのかなと思います。

 夫は面白い人だったから、その考え方や行動、言葉などを世の中に広めていきたいですね。私だけで抱えていると、私が死んだ時に夫の面白いエピソードも全て消えてしまう。それはもったいないと思うから。今後も変わらず、発信は続けていくつもりです。

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 第4回【カップ麺、ホットケーキ、ガリガリ君…末期がんでも大好きなものを食べ続けた夫 倉田真由美「ひとつ大きな後悔」】では、叶井さんが家でどのように過ごしたかについて語っている。

倉田真由美
1971年、福岡県出身。漫画家。一橋大卒業後、『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセーを手掛ける。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。近著に『抗がん剤を使わなかった夫』(古書みつけ)がある。9月30日には「本屋 B&B」にて『夫が「家で死ぬ」と決めた日』 発売記念イベントを開催予定。

デイリー新潮編集部

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