ウクライナの戦場で「ドイツ製のハイテク兵器」が使いモノにならない理由…最前線で酷評された最新兵器の“意外な欠点”とは
ロシア・ウクライナ戦争でドイツの最新兵器は役に立っていない──。注目すべき報告が最前線の戦場から届けられたとドイツメディアが詳報している。これは我々日本人にとっても信じがたい報告だろう。何しろドイツの工業製品は極めて品質が高い。世界一故障の少ない“メイド・イン・ジャパン”を当たり前と考える我々はアメ車には強い不信感を抱いていても、ドイツ車なら喜んで購入する。兵器も同じはずだ。(全2回の第1回)
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一体、ドイツ軍で何が起きたのか、担当記者は「1月30日、ドイツ陸軍の下士官学校で講演が行われました。ウクライナの首都キーウにあるドイツ大使館の次席武官が壇上に立ったのです」と言う。
「約200人の聴衆を前に武官は戦場の現実を率直に伝え、強い衝撃を与えました。ドイツが製造し、ウクライナに供与されている8つの最新兵器が『戦争に適合していない』と欠陥を強く批判したのです。ドイツ陸軍は講演録を作成し、これを機密扱いとしました。ところが一部のドイツメディアが入手し、高級紙の南ドイツ新聞などがスクープ記事として詳報しました」
武官が問題視した兵器の一つが、PzH2000自走榴弾砲だ。1997年から2002年までに185両が生産された。最新の兵器だけあってGPSを組み込んだ照準システムが装備。砲弾自体もGPSやレーザーなどで誘導され、目標に向かって正確に飛んでいく。
百発百中の“デジタル榴弾砲”と“デジタル砲弾”はウクライナの最前線で大活躍し、ロシア軍に大打撃を与える──はずだった。しかし現実は違った。
軍事ジャーナリストは「私もPzH2000自走榴弾砲がウクライナに供与されたと報道で知った時は、ゲームチェンジャーになり得ると判断しました」と振り返る。
北朝鮮の砲弾が圧倒
「ウクライナの戦場で明らかになったPzH2000自走榴弾砲の欠点を一言で表現するなら、あまりにもハイテクすぎたということになるでしょう。ウクライナ戦争が起きるまで、アメリカもNATO諸国も高性能のデジタル兵器を開発すれば、効率よく短期間で敵軍を撃破できると考えていました。ところがウクライナ戦争で出現した戦場は、塹壕を掘りまくり、ひたすら榴弾砲を撃ちまくったほうが勝つという、第1次世界大戦の西部戦線に非常に似たものです。つまり質より量という戦術が有効なのです。ウクライナ軍がドイツ製の最新デジタル砲弾を一発必中で撃つより、ロシア軍が北朝鮮の安価な砲弾を撃ちまくったほうが強いということが分かったのです」
武官は「最新型のドイツ製兵器は使えない」と酷評しただけではなかった。冷戦下に製造された旧式の兵器が戦場で大活躍していることも報告したのだ。
「ドイツ陸軍も運用している現用戦車レオパルト2−A6と、冷戦下に旧西ドイツが開発したレオパルト1を比較してみましょう。レオパルト2−A6は性能だけを考えれば世界最強レベルの戦車であり、無敵と言っても過言ではありません。デジタル化された高性能の射撃システムに、防御力の高い装甲を備えています。ところがウクライナの戦場は泥濘が少なくないため、約60トンと重いレオパルド2A6は悪路に苦しめられています。何より高性能の戦車なので特殊な部品が多く、ウクライナ軍は整備や修理に手を焼いているのです」(同・軍事ジャーナリスト)
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