「もうこりごり」「病院は二度とごめん」夫の決断に倉田真由美の取った行動とは 「大正解」だった訪問医の言葉

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「私が看よう」

 私が「病院で治してよ」といった感情を抱くこともありませんでした。夫の身体のことですから、全て彼自身が決めることだと考えていましたし、家族としてその選択を全力でサポートすることだけを考えていました。

 もし夫が別の選択、例えば抗がん剤治療を積極的に受けるという話になったら、もちろんそれを支持したでしょう。最初は私自身にも迷いがあり、「やっぱりホスピスの方が本人は快適だろうな。私も弱っていく姿を見続けるのはつらいし、世話をする自信ないかも」と考えたこともあります。ですが、日々の介助を積み重ねるうちに「最期まで私がこの人を看よう」という気持ちが固まりました。

 結果として在宅で看取ると決めたのは、非常に良い選択だったと改めて思います。私自身も、もし同じような状況になったとしたら、抗がん剤治療は選ばず、家で過ごすことを望むだろうと感じています。

 在宅で看取ることに関して、色々聞かれますが、私は「そんなに思うほど大変じゃないですよ」と伝えたいですね。夫は寝たきり期間が長くはなかったため、比較的長い期間、普通に暮らせました。

 在宅の患者さんでも、急変すると救急車を呼んでしまうケースがありますが、私たちの訪問診療の先生は「何かあったら救急車ではなく僕を呼んでください。救急車を呼ぶと病院に運ばれ、点滴などでかえって苦しめてしまうこともあるから」と説明してくれました。大正解でしたね、一番いいアドバイスでした。

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 第3回【すい臓がんで余命6か月…抗がん剤治療を拒否した選択を「誇りに思う」 倉田真由美が明かす夫の死生観】では、抗がん剤治療を行わなかったことなどについて語っている。

倉田真由美
1971年、福岡県出身。漫画家。一橋大卒業後、『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセーを手掛ける。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。近著に『抗がん剤を使わなかった夫』(古書みつけ)がある。9月30日には「本屋 B&B」にて『夫が「家で死ぬ」と決めた日』 発売記念イベントを開催予定。

デイリー新潮編集部

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