そろそろ「制服警官はコンビニに立ち寄るな」的なクレームはやめてはどうか…働く人々を委縮させるクレーマーの“見えざる罪”
残念な話だが、日本では働く人に対してクレームをつける文化が存在する。2017年、愛知県で消防車に乗った7人の消防士がうどん屋へ行ったところ、消防署にクレームが入ったという。「何か緊急事態が起こったかと思ってしまう」と困惑する人がいたことも考えられるが、クレームの多くは「公僕が公用車を使ってプライベートの範囲である昼食を摂るとは何事だ。また、7人もいて、その間に火事が起きたらどうするのだ!」的なものだろう。
正直なところ、消防士さんにもうどんぐらい食べさせてあげなよ……と思う。肉体労働なわけで腹も減るし、団長はその後に予定があったため、昼食を摂るにはこうせざるを得なかったと説明した。【中川淳一郎/ネットニュース編集者】
【写真を見る】運転手がサングラスを使用することで話題になった東京桜トラム(都電荒川線)
お客様も立っているのに
他にも「警察官がコンビニで買い物をしていた」「警察官が自販機でジュースを買っていた」というのも時々発生するクレームである。私の知り合いには市役所職員と県庁職員がいるが、うどん店やファミレスの駐車場に市役所・県庁のロゴ入り車を停めたら「市役所職員(県庁職員)が公用車を使って昼食をしていた」と、クレームが入るという。
とはいっても職員のなかには県庁から車で3時間の場所まで早朝に赴き、そこで仕事をして、県庁に戻る際に昼食を摂る人もいるだろう。だから、距離が離れた場所での仕事で昼食休憩を取らざるを得ない時は、役所のロゴの入っていない車をなるべく使えるよう申請するという。
これらは税金で給料を得ている公務員ならではの被クレームだが、民間企業の従業員ですらこの手の難癖をつけられることがある。それはコンビニ店員である。レジで座っていると「お客様が立っているのに失礼だ!」と来るのだという。だが、店員から言わせると「座ってる時間なんてほぼないです。商品の追加やら常に色々な立ち仕事をしていて、休めるときに数分間だけ座ってるだけなんですが……」とのこと。
公務員と店員が糾弾対象になりがち
また、スーパーのレジ専任者にしても多くは立っている。座っても十分できる仕事だと思うが、一部の客が「失礼だ!」と言うのだろう。そこでより働きやすい環境を作るべく、2024年、人材系会社・マイナビの「マイナビバイト」と広告会社・博報堂は「座ってイイッスPROJECT」を開始。レジ店員向けの椅子を開発したのである。
こうした改善への動きは出始めているものの、やはり「労働者たるもの、常に働いている姿を我々に見せなさい!」的な圧は存在する。いや、国会議員なんて居眠りする人が多いでしょうよ。「時間がやたらとかかる採決の投票の時ぐらい寝ていいでしょうが」といった謎の擁護が出てくるのに、なぜか公務員と店員は糾弾対象となる。
先日仰天した「お願い」をバス車内で見た。「運転手が偏光サングラスをかけることをご理解ください」という貼紙だ。恐らく「運転手がサングラスをするなど言語道断だ!」というクレームがあったのだろう。
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