ぶっちぎりでペナントを制するも…CSやプレーオフでまさかの敗退に終わった“悲劇の球団”

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 今季のセ・リーグは、阪神が2位・巨人に17ゲーム差(V決定時)をつけ、9月7日に史上最短Vを達成した。だが、わずか数試合でシーズンの実績がひっくり返ってしまうこともあるクライマックス・シリーズ(CS)では、阪神が思わぬ落とし穴にはまる可能性もある。シーズンでぶっちぎりVを達成しながら、CSやプレーオフでまさかの敗退に終わったチームを振り返る。【久保田龍雄/ライター】

史上最大の下剋上

 CSで3位・DeNAに14.5ゲーム差をひっくり返されたのが、2017年の広島だ。

 同年の広島は、開幕2戦目から1分けを挟んで10連勝というロケットスタートに成功した。5月5日から阪神に3連敗し、首位を奪われたものの、同下旬から7連勝して首位の座をキープ、交流戦も球団史上初の2位を記録するなど順調に突っ走り、9月18日に阪神を下して37年ぶりのリーグ連覇を達成した。

 2位・阪神に10ゲーム差、3位・DeNAに14.5ゲーム差のぶっちぎりVだったが、CSではまさかの暗転劇が待っていた。

 10月18日のファイナルステージ第1戦、前日に阪神とのファーストステージを2勝1敗で制したばかりのDeNAに対し、3対0で5回降雨コールド勝ちを収めた。2年連続の日本シリーズ進出に向け、順調な第一歩を踏み出したかに見えた。

 だが、翌19日の第2戦は、ルーキー左腕・浜口遥大を攻略できず、失点のすべてが2死からという悪い流れのまま、2対6で敗れた。

 20日の第3戦も、4度にわたって先頭打者が出塁しながら、打線が噛み合わず、0対1と完封負けを喫する。

 そして、台風襲来で2日連続中止後に再開された10月23日の第4戦も、好機に打線が噛み合わず、3対4と3連敗。あとがなくなった。

「焦らずきっちり自分たちの野球をやるだけ」と土俵際からの逆襲を目指した緒方孝市監督だったが、翌24日の第5戦もDeNA・ラミレス監督の采配が面白いように的中し、3対9と完敗。「悔しい。今はそれしか言葉が見つからない」 (新井貴浩) と、無情の終戦となった。

 アドバンテージも含めて2勝4敗の広島は、シーズンなら14.5ゲーム差が12.5ゲーム差に縮まるだけなのに、この数字がまったく意味をなさず、ぶっちぎりVが徒労に終わるという皮肉な結果に。

 DeNAが「史上最大の下剋上」と称えられる一方で、広島ファンの間で「10ゲーム差以上なら、せめてアドバンテージを2にすべき」の声も上がった。

短期決戦の怖さ

 CSで“悪夢の4連敗”を喫し、シーズンの7ゲーム差をひっくり返されたのは、2014年の巨人である。

 同年の巨人は、リーグトップのチーム防御率3.58をマークしたものの、エース・内海哲也は7勝止まり、チームトップの12勝を挙げた菅野智之も、故障で2度にわたり離脱するなど、万全ではなかった。打線も主砲・阿部慎之助が打率.248、19本塁打と不調であり、打撃10傑に入った選手もゼロという貧打ぶりであった。

 それでも2位の阪神に7ゲーム差でリーグ3連覇を達成できたのは、安定した投手力とリーグトップの得点圏打率.291で、僅差の試合を競り勝ってきた結果と言える。

 だが、CSでは、頼みの綱である菅野が右肘故障で出場できなかったことも痛手となり、投打ともに絶好調に仕上がった阪神に圧倒された。

 第1戦は内海が初回にゴメスの2ランなどで3点を失い、打線も阿部の一発のみに終わり、1対4と完敗。第2戦は2対5、第3戦も5回まで2点をリードしながら2対4と逆転負け。ほとんど見せ場を作れないまま剣ヶ峰に追い詰められた。

 そして、第4戦も先発・小山雄輝がマートンの3ランなど3本塁打を被弾し、2回途中6失点KO。6点ビハインドで迎えた9回に、セペダと坂本勇人が連続本塁打を放ったものの、反撃はここまでだった。アドバンテージの1勝のみの実質ストレート負けに、原辰徳監督も「投打のバランスで阪神が上回っていた。我が軍はうまくかみ合わなかった。そういう4試合だった」とお手上げだった。これも短期決戦の怖さである。

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