71%が「米国社会は崩壊」と回答…「政治家の暗殺・未遂」は60年代以降最多、名物TV番組は終了 悩める超大国の金融市場に立ち込める暗雲
「激しい言葉が暴力を助長している」の声
米国の地政学リスクの高まりも心配だ。若手保守活動家カーク氏の暗殺を受けて、トランプ大統領は17日、反ファシズム運動を展開する「ANTIFA(アンティファ)」をテロ組織に指定すると発表した。
トランプ政権はメディアへの圧力も強めている。ABCテレビは17日、ジミー・キンメル氏が司会を務める深夜トーク番組の放送を無期限で停止すると発表した。
この決定は、連邦通信委員会(FCC)のカー委員長がカーク氏を巡るキンメル氏の発言を問題視し、ABC系列局の免許を取り消す可能性を示唆したことを踏まえたものだ。
ほとんどの米国民は現在の状況を憂慮している。ロイターの最新の世論調査で、94%が「政治について話す際に使われる激しい言葉が暴力を助長している」と回答した。
さらに71%が「米国社会は崩壊している」との意見に賛同し、66%が「政治的信条を理由に地域社会の人々に対して暴力がふるわれる可能性がある」と懸念している。
統計は米国民の危惧を裏打ちしている。統計によれば、過去5年間に起きた政治家の暗殺・暗殺未遂件数は1960年代以降で最多となった。米国が世界に誇った健全な民主主義も今は昔だ。
火種が多すぎる米国の金融市場
米国の政治経済が混迷の度を深めるのを尻目に、好調さを維持し続ける金融市場も火種を抱えているのが実情だ。
9日、テキサス州のサムプライム自動車ローン企業が突然破綻した。すると、その衝撃はJPモルガン・チェースなどウォール街の大手金融機関を巻き込んだ。
信用情報が低い個人向けのサブプライム自動車ローンは、ウォール街の金融商品では享受できない高金利を武器に、その市場規模が約800億ドル(約12兆円)にまで拡大した。2000年代のサブプライム住宅ローンと同様、貸し出し基準の甘さなど以前から指摘されていた問題がついに顕在化した形だ。
投資ファンドが企業に直接融資するプライベートクレジットも要警戒だ。
高利回りが期待できることから、サブプライム自動車ローンと同様に、プライベートクレジットにも大量の資金が流れこんでいる。市場規模は1.5兆ドル(約219兆円)に膨らみ、商業銀行の企業融資(約409兆円)に迫る勢いだ。
一方、米国の今年1~7月の大企業の倒産は446件に達し、2010年以来の高さとなっている。今後の倒産件数がさらに増加すれば、プライベートクレジット市場でパニックが起きる可能性は十分にある。
悩める超大国の今後
既に問題化している商業用不動産市場も最悪期はこれからだ。ローンの借換え期を迎える今年後半から来年にかけて、不良債権が急増するのは必至だろう。
このような状況下でリセッション入りや地政学リスクが意識されれば、さすがの米金融市場も窮地に陥ってしまうのではないかとの不安が頭をよぎる。
「米国で再び金融危機が発生する」と断言するつもりはないが、悩める超大国の今後の動向について最大の関心を持って注視すべきだ。
[2/2ページ]

