佐藤健主演「グラスハート」 “ネトフリならではの無理めな展開”でも満足できたワケ
佐藤健がプロデュースかつ主演、天才音楽家を演じた「グラスハート」。やっと一気見。音楽ドラマとしての迫力や役者の本気汁が溢れる点、演奏シーンのカッコよさとクオリティーの高さ、適材適所の配役にうなって一気見。Netflixならではの無理めな展開に爆笑する一方、雨粒の美しい映像に心が洗われたりもしてね。「健、病の匂いがする」とか「この人は寝返る」とか「この人はかんしゃく起こしてモノ壊して、地団駄踏むな」とか予測通りだったが、引かれる部分も多かったので非常に満足。
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健が流麗に演じたのは藤谷直季。天才かくあり。映画「はたらく細胞」での白塗り白血球役も適役だったが、与えられた役を器用にこなすだけでなく、時間をかけた自己鍛錬が必須な難役に挑みたかったのだと推測。
また、ドラマーのヒロイン・西条朱音を演じた宮崎優も、練習にどれほどの時間を費やしたか。心の底から楽しそうにドラムをたたく姿がまぶしくて愛おしかった。
朱音はドラマーとしては未熟だが、藤谷に見いだされて、バンドに参加。メンバーはバンド界隈で引く手あまたの名ギタリスト・高岡尚(長い髪と指が最高の町田啓太)、多重録音が得意なキーボード担当・坂本一至(かずし・繊細と辛辣〈しんらつ〉の共存が秀逸な志尊淳)。癒やし担当の町田、胸キュン担当の志尊、鉄板の布陣。それぞれの演奏スキルが高いだけに、相当やりがいもあったに違いない。
で、予測通りだったのは、劇中で悪の存在と描かれた音楽プロデューサー・井鷺一大(いさぎかずひろ・藤木直人)。業界の既得権益の権化として君臨し、藤谷に対してえげつない嫌がらせ&妨害をするっつう展開な。彼の一声でライブ会場が直前一斉キャンセルなんてあり得んと思いつつも、おそらく音楽業界の粘土層みたいに利をむさぼるおじさんの横暴を描きたかったのよね。怒りでグラスやスマホを壊す井鷺に「だよねー」と思ったわ。でも藤谷の圧倒的な才能に嫉妬し、蛮行をしでかすも、廃人となる様を歌手でもある藤木が熱演。
また、そんな井鷺にプロデュースされたディーバ・櫻井ユキノが掻き回す役だろうなと。高石あかりが好戦的かつ蠱惑的に演じたのだが、歌唱パートはaoが担当。高石の歌唱力は「アポロの歌」(TBS)で立証済みだが、今回のディーバには本職を採用、正解だと思う。高石の演技とaoの歌声がこの上なく符合したから。
他にもYOU、YUKI、レイニ、竹原ピストルら本職の人が多数登場。ネトフリ俳優の開拓者・山田孝之も歌声と靴下を披露するチョイ役で登場。配信系で頑張る唐田えりかもマネージャー役で出演、少女漫画的嫌がらせで暗躍。で、最大の珍味は、悪辣(あくらつ)な登場から紳士的善行で全部持ってった真崎桐哉(しんざきとうや)役の菅田将暉だ。セックス・ピストルズのシド・ヴィシャスっぽく、「デスノート」のリュークにも見えつつ、「セッション」のJ・K・シモンズばりの鬼要素もかましながら、めっちゃいい男(暴漢からファンを救う)で、めっちゃいい弟(健の弟設定)っつう。
とにかく一つ一つの場面を丁寧に演(や)りたい役者の思いが報われる作品だよ。








