この先もずっと円安? FRBが9カ月ぶり利下げ決定で日米金利差縮小でも円高にならない「3つの理由」
現地時間9月16日から翌17日にかけて開かれたアメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)において、FRB(米連邦準備理事会)は昨年12月以来、約9カ月ぶりとなる25bp(1bp=0.01%)の利下げを決めた。対する国内では、日銀が年内にも25bpの利上げを行うとの観測が広がっており、日米金利差の縮小が円高を後押しするという見方が大勢だった。ところがフタをあけてみると、瞬間的に145円台半ばまで円高が進んだドル円相場は翌18日には147円台とここ数か月の“定位置”に逆戻り。長期化する円安相場にいまだピリオドが打たれる様子はないのである。なぜ為替が金利差縮小に反応しにくくなっているのか――。マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏に聞いた。
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通貨の需要は金利差だけでは決まらない
そもそも論ですが、為替とは「通貨の交換レート」ですので、明確な理論値というものは存在しません。例えば株価であれば、将来のキャッシュフローを資本コストで割り引くと理論値が導き出せる、といった学術的な理論があるわけですが、為替にはそういった理屈がないのです。
そこで、為替のプレイヤーが少ない手掛かりの中で材料視するのが「金利差」になるわけです。ところがこの金利差も実はあまり当てになりません。過去にはアメリカの政策金利が跳ね上がった際にドル高にならず、むしろドルが売られた局面もありました。つまり、金利差はある場面では為替の説明要因になることもありますが、ある時には金利差では説明がつかない動きをすることもあるわけです。
また、ある国の通貨の金利が高かったとして、その金利の恩恵(スワップ)を受けるためには、その通貨を持ち続ける必要があります。
例えばアメリカの金利が5%の時に、円をドルに替えて運用すれば5%の利率がつくわけですが、運用後にドルを円に転換する際に、5%を超えた円高が進んでいれば、むしろ損をしてしまうわけです。好例がトルコリラで、トルコの金利は約40%と超高金利なわけですが、その利率に魅力を感じて運用した人は、金利以上の通貨の下落に見舞われて大損した人も少なくありません。
つまり、金利差だけが通貨の需要を左右するという考え方がまず間違っているのです。
先を読む為替市場
現在のドル円の相場観については、中央銀行の金融政策の方向が逆であるため日米の金利差が縮小し、「これからは円高が進む」と読む人が多いのですが、実際はそれほど円高が進んでいません。
円安の続く理由の1つ目は、「相場は常に先を読む」ということです。アメリカが利下げを続け、日本は利上げの方向へ、という動きは既定路線としても、果たして実際に金利差がどこまで縮小される余地があるのか、ということを相場は見ているのです。
つまり、25bpの利下げが実施されてもアメリカの金利は4.00~4.25%と日本の金利よりまだまだ高いわけで、しかもインフレがまだ完全に収まっていないために、利下げが再開されたとしても、その流れを継続していける状況にはありません。一方の日銀も、経済状況が許せば利上げをしていくという姿勢ではありますが、自信を持ってどんどん利上げできるような経済状況にはないため、そのペースは緩やかになることが予想されます。
絶対的な金利差がなくならない以上、積極的に円を買う理由にはならないのです。
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