この先もずっと円安? FRBが9カ月ぶり利下げ決定で日米金利差縮小でも円高にならない「3つの理由」

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今の日本は日銀が利上げを進める状況にはない

 日銀の利上げに関して言えば、私は今の日本に「利上げをする理由はない」という考えです。

 日本が本当の意味でインフレに苦しんでいて、利上げによって景気を冷ましインフレを抑制しようというのなら、利上げは意味がありますが、今日本で起きている消費者物価指数の上昇は、食品価格の上昇によるところが大きいのです。

 消費者物価指数にはまず「総合」という指数があり、その中にエネルギーを除いた「コア」という指数と、エネルギーと生鮮食品を除いた「コアコア」という指数があります。

 このうち総合で見るとインフレ率は3%近くとなっていますが、コアコアの指数から生鮮食品以外の食料品まで除いた数字は、実は1.6%です。食料品は“令和の米騒動”で言われた米の価格や、海外から輸入する原材料で作るマヨネーズなど、コメを巡る失政や海外インフレの影響を強く受けたものが多く含まれています。

 そうした異常値を除くと1.6%になるということで。この数字は日銀の目標とする2%のインフレに全然届いてないんです。だとすると、利上げによって景気を冷やしてインフレを抑えるという政策が果たして本当に正しいのか。

 国民がどんどんお金を使って物を買うことで起こる、需要の高まりによるインフレを「ディマンドプル」と言いますが、今の日本がそうなっているかと言えば全然そうではありません。

 今起きているのは、海外インフレや国内の人手不足が要因の供給サイドのインフレなので、利上げをしてまで景気を冷やす金融政策は必要ないのです。

経済対策は金融政策よりも財政によって行うべき

 これまで政府がずっと掲げてきたスローガンに「物価と賃上げの好循環」というものがあります。つまり、日本もようやくデフレを脱却しインフレになってきましたと。だけどそれに賃上げが追いつかず、生活苦を訴える人が出てきていますよ、と。

 だから、「このインフレをなんとかしてくれ」という話が日銀に行くわけですが、先ほどお話しした通り、いま日銀が利上げしても、国内需要の加熱が要因のインフレでないために、むしろ必要以上に景気を冷まして日本経済に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ですから、現状の生活苦の解消は金融政策ではなく、むしろ財政でやるべきなのです。政治家たちが掲げている消費税の減税や、ガソリンの暫定税率廃止、電気ガスの補助金など、実質賃金を上げる形での物価対策ですね。

 日本経済を考えた場合には、インフレの進捗だけを見ても仕方がなくて、重要なのは賃上げが続くかどうかです。ここ3年は連続で5%を超える大きな賃金上昇が続いてきましたが、そろそろ息切れ感があります。今年の春闘の結果を見ると、これまでと違いかなり濃淡があり、上がるところと上がらないところが出てきました。均せば5%ぐらいの賃上げにはなりましたが、企業業績も連続増益だったものが、本年度は6期ぶりの減益となる見通しですから、そろそろ頭打ちでしょう。

 こうした状況で利上げしてしまうと、課題である中小企業の賃上げの芽を摘むことになり、ようやく上向きかけた経済成長にストップがかかってしまう恐れがあります。

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