「技術系」国家公務員が400人超「定員割れ」の非常事態…理系学生の“公務員離れ”が止まらない根本的な理由
“黙っていても学生が来る”時代ではない
こうした“理系公務員離れ”が進めば国民生活にも影響が出てきます。例えば、今年“定員割れ”した土木区分の一般職は、各地域の地方整備局で道路やダムなどの整備計画などにも携わります。能登半島地震の際には地域の土木職公務員が足りず復旧作業に苦労したと言いますが、今後、大規模な震災や豪雨災害などが起きた際に対応にあたる土木職の国家公務員が足りなければ、復興にも遅滞が出かねません。
技術系公務員が足りないのであれば民間との人事交流を軸に人手不足を解消しようとしているのがデジタル庁です。デジタル庁は発足時に民間から数百人単位で人員を採用しました。当時の平井卓也デジタル相は、官公庁と民間企業で人材を行き来させる<「リボルビングドア」の仕組みも構築したい>と、一度民間に転職した人材を再度迎え入れる“出戻り採用”も歓迎しています。しかし、民間との人事交流を積極化するということは、人材採用に関して労働市場全体の影響を受けるということ。“出戻り採用”をデジタル庁は目指しますが、他の民間企業と比べてデジタル庁をあえて選ぶ魅力があるのかといえば疑問です。 出戻り組が望めないとなると純粋に民間企業との採用競争になり、圧倒的に不利なのは変わりません。
これまで日本の官僚組織の中心は文系の事務職でした。理系の公務員は主流ではなかったし、ごく一部を除いて、理系の専門知識を使って現場仕事をすることもありませんでした。実際の業務は民間企業に任せればよかったからです。この状況は依然として変わりませんが、科学技術の比重が年々高まるだけでなく、激甚化する災害への対応、官公庁のデジタル化、複雑さを増す先端技術への予算配分など、政策決定過程において理科系的知識や経験が求められるなど、今後、先頭に立って旗振り役になる理系公務員の需要は高まるばかりです 。
もはや、国家公務員という仕事は「黙っていても学生が来る」という時代ではありません。政府として、何故その技術系職種が必要なのか、その職種を務めることでどのようなスキルが身につくのか、具体的に学生に向けて説明していくことが今後必要になってくるのではないかと思います。




