「セ・リーグ」DH制導入で“投高打低”は打開される? 日本初採用「1975年のパ・リーグ」ではことごとく“打撃成績を落としていた”
セ打撃部門に異変あり
阪神が2年ぶり、2リーグ制では最速となる圧倒的な強さでリーグ優勝を決めた翌日の9月8日、藤川球児監督(45)は守護神・岩崎優(34)と最速優勝の立役者とも言われるセットアッパーの石井大智(28)の登録を「リフレッシュ休暇」として抹消した。セ・リーグファンや関係者の関心は、2位以下の順位とクライマックスシリーズ、そしてタイトル争いへと移された。
【写真】セ・リーグのDH制導入に「80%くらい賛成」と語った、阪神OBでもある人気監督。恩師の「名将」はDH制導入に反対していた
そのタイトル争いの打撃部門で、ある“異変”が起きている。
阪神優勝から1週間ほどが経過した9月15日の時点で、セ・リーグには打率3割を超えたバッターは一人しかいないのだ。その“貴重な3割バッター”である広島・小園海斗(25)の打率は3割4厘。2位は巨人・泉口友汰(26)の2割9分4厘だが、小園ですら1試合に2安打以上をマークする「マルチ」を連続させなければ、3割をキープできない“危険水域”にいる。
「昨季はDeNA・オースティン(34)が3割1分6厘で首位打者のタイトルを獲り、2位がヤクルト・サンタナ(33)の3割1分5厘でした。NPB全体の『投高打低』が指摘されて久しいですが、昨季のセ・リーグ投手成績を振り返ってみると、防御率1点台の投手は中日・高橋宏斗を筆頭に5人もいました。今季は阪神・才木浩人(26)、DeNA・ケイ(30)、巨人・山崎伊織(26)の3人。投手が良すぎるのではなく、セ・リーグの野手全体の問題と言えるでしょう」(在京球団スタッフ)
海の向こうではドジャース・大谷翔平(31)が2年連続50本塁打と、華々しい記録を打ち立てているが、確かにホームランは野球の華だ。息を呑む投手戦も面白いけれど、花火のような打ち合いのほうが試合も盛り上がる。
NPB全体で見た観客動員数は右肩上がりだが、「投高打低」がさらに深刻化すれば、プロ野球の醍醐味も薄れてしまう。これに重なるのが、27年シリーズから導入が決まったセ・リーグの指名打者(以下=DH)制の導入だ。打つことに秀でた選手が投手に代わって打線に入れば、得点効率は上がるはず。投高打低の傾向にも歯止めを掛けてくれそう……だが、そんなに簡単な話ではないようだ。
パ・リーグ球団のスタッフが、今季の交流戦をこう振り返る。
「25年のセパ交流戦はセの43勝に対し、パは63勝(2分)。セパ交流戦でパが勝ち越す年が多く、その一因としてDH制が挙げられています。DH制に不慣れだからか、セの監督やコーチは単にベテランや、守備の巧くない選手をDHにまわしているだけのような印象も受けます。DHにまわされた選手も味方が守備についている間、モチベーションを維持するのに苦労しているようです」
セのDH制導入が決まったとき、巨人・阿部慎之助監督(46)は「選手寿命(現役生活)が伸びる」と語っていたが、他球団の監督、コーチたちも同じようなことを話していた。
DHに向いている選手とは、一般的に打撃力に特化したタイプや守備面での衰えを隠せなくなったベテランだと言われている。しかし、本当にそれだけだろうか。
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