「自宅か事実婚相手の家で寂しく暮らしているのでは」 裏金事件で無罪主張の大野泰正元議員 華麗なる家系に泥を塗り「政治に関わることはないでしょう」

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 自民党結党の立役者で初代副総裁を務めた故・大野伴睦(ばんぼく)の孫が、自民衰退を招いた事件で被告として法廷に立った。元参院議員の大野泰正(やすただ)被告(66)である。

「道義的責任はあるが犯罪を犯したことはない。無罪を主張させていただきます」

 9月10日、東京地裁。自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件の初公判で、元秘書と共に政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた大野被告は力を込めて語った。

 社会部デスクが言う。

「起訴事実は2018~22年に旧安倍派から受け取ったノルマ超過分のパー券収入計約5100万円を、大野被告の資金管理団体の収支報告書に記載しなかったというもの。被告は、受け取った現金は“秘書たちによって適正に処理されていると信じていた”と虚偽記載を否定。一貫して身の潔白を訴えました」

 公判は今後、事務所関係者などへの証人尋問や被告人質問を経て来年3月に結審する予定となっているが、

「無罪主張は無理筋だと思います。弁護側は現金を派閥からの“預り金”としていつでも返せるよう管理していたと主張している。対する検察側は現金を“寄付金”として、被告のクレジットカード決済用の口座に移して飲食代などに使っていたと指摘。これは心証が悪いですし、知らなかったでは済まされません」

銀座や五反田のラウンジで……

 一連の事件では大野被告を含む元国会議員4人と派閥の会計責任者ら計12人が立件され、8人の有罪がすでに確定している。仮に大野被告の無罪主張が認められるとしても、大きな“罪”が消えることはない。

「政治家一族の一員としての責任です」

 と、被告の地元岐阜県の政界関係者。

「泰正さんの祖父、伴睦さんの四男である明さんは労働大臣や運輸大臣を務め、その妻のつや子さんも参院議員でした。明さんの二男が泰正さんです。つまり、戦前から3代にわたって“保守王国・岐阜”を築き、国政でも存在感を示してきたのが大野家なのです」

 華麗なる家系に生まれた3代目の経歴を振り返ると、

「幼稚舎から大学まで慶應です。大卒後は全日空での勤務を経て、明さんとつや子さんの秘書として働いた。03年に岐阜県議、13年に参院議員に当選し、国土交通政務官などを歴任しました」

 参院議員2期目の24年、裏金事件で在宅起訴されて自民党を離党。今年7月の参院選への出馬も断念した。

 大野被告の地元事務所関係者によれば、

「参院議員当選後から地元対応が疎かになり、行事などは秘書任せでした。一方で、東京の銀座や五反田、岐阜市内のラウンジやカラオケボックスでの費用を政治活動費として支出していた事実が報じられ、地元の不興を買いました」

 にもかかわらず、

「以降の収支報告書でも、麻布十番の高級焼肉店などにたびたび通っていた様子がうかがえます。こうした大野さんの姿勢で地盤と看板が揺らぎ、後継者も育ちませんでした。自民2議席が欠員となった今月の県議補選では、共倒れを防ぐために公認候補を1人に絞らざるを得ない有様です」

事実婚の妻と子

 しかも、大野被告は独身なので世襲の可能性もゼロだという。

「大野さんには事実婚の相手とそのあいだに20歳近くのお子さんがいますが、政治とは無縁です。初公判前、多少は地元支援者へのあいさつ回りをしていたようですけど近ごろは音沙汰がない。伴睦さんの銅像が立つ岐阜羽島駅近くの自宅マンションか事実婚の相手のところなどで寂しく暮らしているのでは。いずれにせよ、今後、大野さんが政治に関わることはないでしょう」

 自民党結党から70年。孫は裏金事件の被告となり、保守王国は実質的な終焉(しゅうえん)を迎えた。伴睦翁が、泉下で泣いている……。

週刊新潮 2025年9月25日号掲載

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