平均球速は「3キロ上昇」与四球率も「半減」…手術明けの「大谷翔平」が見せる驚異の進化 投手としてより“完全体”に
ナ・リーグ西地区は依然ドジャースとパドレスの一騎打ち状態が続いている。ドジャースは救援陣がチームの足を引っ張る試合が多いが、対照的に先発投手陣の奮闘が目立つ。特に直近3試合の登板で防御率0.66と圧巻の投球を披露しているのが大谷翔平だ。
2年ぶりに投手として復帰した二刀流右腕の今季防御率は3.29。これはMLB通算3.03よりも若干悪いが、その投球内容を掘り下げると、防御率では測り切れない至高のパフォーマンスを披露していることが分かる。進化途上の“投手・大谷”を幾つかの切り口を用いて分析した。
【八木遊/スポーツライター】
***
【写真を見る】モデル並みの美女ばかり! “ドジャース奥さま会”に溶け込む「真美子さん」
大谷の降板直後に救援陣が炎上
日本時間17日のフィリーズ戦は、ドジャースにとってまさに悪夢のような試合となってしまった。この日、1番投手兼指名打者で先発した大谷は、投げては5回無安打1四球とほぼ完璧な投球を披露。打っても試合終盤に追撃となるシーズン50号を放つなど、投打でチームを引っ張った。
ところが、大谷の降板直後に救援陣が炎上。4点のリードは瞬く間に2点のビハインドと化した。ドジャースは終盤に追いついたものの、最後はブレーク・トライネンがフィリーズ打線につかまり、敗北を喫した。まさに救援投手が先発投手の奮闘をフイにする、ドジャースにとって典型的な試合になったというわけだ。
ファンからは「ナゼ大谷を続投させなかった」という声が多く上がったが、それも当然だろう。球数も68球で、大谷の右肩にはまだ余力もあったはず。大谷をもう1イニング投げさせていれば、試合の流れも違ったものになっていたはずだ。
防御率と大きく乖離…“FIP”とは
冒頭で述べたように、大谷の今季防御率は3.29。もちろん規定投球回には達していないが、ナ・リーグ防御率ランキングに当てはめると7~8位相当だ。8月中旬までに一時、4点台半ばまで悪化していたが、約1か月で2年前の3.14と同水準まで改善させている。
そして実際の防御率が示す以上に、今季の大谷の投球内容は圧倒的である。近年、メジャーリーグでは防御率はあくまでも表面的なもので、実際の投手のパフォーマンスとは結び付かないというのが定説だ。実際、グラウンド内に飛んだインプレー打球がどれだけの割合でヒットになったかを示すBABIPで、今季の大谷の数値は.3320。これは打球の飛んだ位置などの点で、大谷が「運」に恵まれていないことを指し示している。
一方、投手の本質を見るために用いられるのが、FIPやxERAといったあまり日本のファンに馴染みがないスタッツである。これらのスタッツを見れば、今季の投手・大谷はTJ手術以前の状態に戻ったどころか、むしろ進化していることが分かる。
その前に大谷の奪三振率と与四球率を見ておこう。どちらも2年前との比較だが、前者は11.39から11.85へ、後者は3.75から1.98へ、どちらも良化している。特に与四球率はほぼ半減しており、制球力は格段に上がっている。
その影響もあって、大谷のFIPは2年前の4.00から、今季は2.13へ大幅に良化している。FIPとは「Fielding Independent Pitching」のことで、「守備から独立した投球内容」と訳すことができる。これは、被本塁打、与四死球、奪三振のみを評価対象とし、投手の純粋な能力を測るために用いられる指標だ。
通常は防御率とFIPの数値に大きな乖離は生まれないはずだが、今季の大谷は防御率3.29とFIP2.13と大きな差がついている。投球内容を見れば、本来の防御率は2点台前半でもおかしくないと言い換えることもできる。
[1/2ページ]


