平均球速は「3キロ上昇」与四球率も「半減」…手術明けの「大谷翔平」が見せる驚異の進化 投手としてより“完全体”に

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フォーシーム球速が大幅上昇

 もう一つ、ここ数年で一気に注目される指標となったxERAという指標も見ておこう。xERAの「x」は「Expected」のことで、日本では「期待防御率」と訳される。この指標は、打球の種別(ゴロ、フライ、ライナー)や、打球の質(打球速度、打球角度)、奪三振、与四死球などの要素を加味し、防御率以上に投手の能力を評価するといわれている。

 xERAもFIPと同じように防御率に近い数値に収束するはずだが、今季の大谷のxERAは2.39。やはりこの指標でも大谷の本来の防御率は、2点台前半でないとおかしいことを証明している。

 ではなぜ、2度のトミー・ジョン手術を経て、投手・大谷はさらなる進化を遂げているのか。その理由はフォーシームに求めることができる。

 まず大谷の球種別投球割合を見ると、フォーシームの投球割合は2023年に32.9%だったが今季は37.3%に増加。若干ではあるが、フォーシームで押す傾向が強まっている。

 それもそのはず、フォーシームの平均球速は23年の96.8マイル(約155.8キロ)から今季は98.5マイル(約158.5キロ)へ、2.7キロもアップ。トミー・ジョン手術明けは球速が速くなるともいわれているが、まさに大谷はそれを実証している形だ。

フォーシームの破壊力もアップ

 特に大谷が登板した直近2試合はフォーシームの平均球速がどちらも99マイル台をマークしている。大谷は6月の復帰登板で平均球速99.1マイルを叩き出したが、その後は97~98マイル台を行ったり来たりという試合が続いていた。登板を重ねて、より速いフォーシームを投げられるようになったと解釈していいだろう。

 そして大谷のフォーシームはただスピードが上がっただけでなく、破壊力も増している。

 大谷が今季、フォーシームを投じた際のVertical Drop(縦の落差)は13.7インチ(約34.8センチ)。これは23年の15.1インチ(約38.4センチ)から3センチほど減少している。これが意味するのは、2年前に比べて今季はより伸びのある(よりホップする)フォーシームを投げているということだ。

 まもなくレギュラーシーズンが終わり、ポストシーズンが開幕する。大谷が救援に回る案も浮上しているが、さらなる進化を果たした大谷なら役割にかかわらず、無双してくれるだろう。投手としての“リハビリ”が終わり、投手・大谷の第3章が幕を開ける。

 ※データは『MLB.com』と『ベースボール・サバント』を参照

八木遊(やぎ・ゆう) スポーツライター
1976年生まれ。米国で大学院を修了後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLなどの業務に携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬記事を執筆中。

デイリー新潮編集部

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