まるでドカベンの“秘打”だ…常識ではあり得ないまさかの“珍打球”に球場が騒然となった!

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キツネにつままれた表情で

 この間に2者が生還し、決勝の2点タイムリー二塁打に。2対0の勝利で、チームも連敗を「4」で止めた。

 漫画「ドカベン」もビックリの“秘打”でヒーローになった原口は「いいところに飛んで良かったです」とニコニコ顔。金本知憲監督も「最初、ファウルゾーンに飛んだみたいで、中(フェアゾーン)に入って来て。それもバットの出がいいから、ということにしておきましょうか」と首を捻るばかりだった。

 原口は20年10月6日の広島戦でも、2点を追う8回2死満塁、三塁正面に飛んだライナーが“空中イレギュラー”で左前に抜けるという超常現象的な同点2点タイムリーを放っている。

 ロッテの本拠地・ZOZOマリンスタジアムは、名物・強風による“珍打球”が多いことで知られるが、“打球が消える”珍事件が起きたのが、2022年8月12日の日本ハム戦だ。

 0対の2回無死、井上晴哉がフルカウントから一塁方向に高々と飛球を打ち上げたことが発端だった。この日は台風8号の影響で上空10メートルの強風が吹き荒れており、なんと、ファースト・野村佑希、セカンド・アルカンタラ、ライト・万波中正が揃って打球の行方を見失ってしまった。

 ライン際ギリギリの打球を想定していた3人がなすすべもなく呆然と立ち尽くすなか、打球はあさっての方向の一塁側スタンド近くのファウルゾーンに落下。一塁を回りかけた井上もキツネにつままれた表情で、打席に戻っていった。

野球の神様からのプレゼント

 最後は風のないドーム球場で、打球がスライスした世にも不思議な物語を紹介する。

 2020年8月5日の日本ハム対西武、1点を追う西武は6回、スパンジェンバーグの右越え2ランで2対1と逆転したあと、なおも1死一塁で、山川穂高が左翼線に大飛球を打ち上げた。

 だが、打球は左に切れ、明らかなファウル。山川自身も「打った瞬間は、ファウルだと思いました」と残念そうに打席でうつむいた。

 ところが、風がないはずの札幌ドームにもかかわらず、打球は右側のフェアゾーンに向かって大きくスライスすると、左翼ポールにコツーンと当たり、試合を決める貴重な2ランとなった。

 これには、打球の行方が一番よく見える位置にいた山川も、思わず「オーッ!」と口を大きく開き、驚愕の表情になった。

 12打席ぶりの13号に、「打ったのはチェンジアップ。打球がスライスして、ビックリしました。あんな感じでホームランになるのは、何年かに1度、あるかないかだと思う」と“野球の神様からのプレゼント”に大喜びだった。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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